毎年恒例のトヨタのファン感謝イベント、トヨタモータースポーツフェスティバル(TMSF)が22日(日)に富士スピードウェイで開催され、2万8千人が参加する中、日頃から応援してくれているファンと一緒に楽しめるイベントが多数開催された。また、今年限りでF1から撤退を表明したトヨタF1チームのファイナルランが行わた。
イベント終了後には、小林可夢偉選手、中嶋一貴選手、高橋敬三氏(トヨタモータースポーツ部部長)、今井智巳氏(トヨタモータースポーツ推進室室長)が参加しての記者会見が行われ、トヨタ撤退や来シーズンに向けての現在の状況について語った。
左から高橋敬三氏(トヨタモータースポーツ部部長)、中嶋一貴選手、小林可夢偉選手、今井智巳氏(トヨタモータースポーツ推進室室長)
Q.トヨタの撤退を聞いたのはいつ? そのときの感想と来年に向けては。
A.可夢偉 :「朝起きてリリースが出てても驚かないでね」と言われた時は確実にそう言い切った訳じゃなかったので、実際確実に知ったのは朝起きてマネージャーから電話が掛かってきた時。その時に正式に聞きました。あまりにもショックで、「何て言えばいいのか分からないですけど大丈夫です」と言いました。よく分からなかったですね、その時は。よく考えたら全然良くないよなと思いながらも、そう言ったのを覚えてます。それ以外はよく覚えてないですね。来年の状況ですか? このところはもちろん他チームと交渉はしてるんですけども、正直なところ僕はちょっと今休みをもらってて、チームが決まらないと僕自身は動けないので交渉はマネージャーに任せてます。12月にまたヨーロッパに戻るので、その時から本格的に来年のことを決めようかなと思ってるんですけども、どうなんですかね。僕が今何かしたってうまくいくとも思えないので、僕は2年もしっかり働いたので休憩をしようと思ってます。だから、来年の状況は僕は分からないです。
A.一貴 :撤退をすると聞いたのは、日本時間の4日朝、向こう(ヨーロッパ)でいうと3日午後だったと思います。状況的には可夢偉くんと同じような状況で、僕自身はトヨタのF1チームで走ってきた訳ではないんですけども、TDP(トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム)というプログラムを通してずっと支援をしてきていただいていたので、この先どうなるのかなというのが正直な気持ちでしたね。なので非常に残念なニュースではありましたけれど、僕自身は来年に向けてどういう状況であれウィリアムズ以外のチームを探していかなければならなかったので、大きく関係することでは無いのかなと思いました。一ドライバー、一ファンとしては残念でしたね。来年に向けてですけど、今のところこれも可夢偉くんと一緒で交渉をしている段階で、みんなに発表することはないんですけれども、F1のチームがいくつか増えたりする中で、状況がまだ確定していないことが多々あってドライバーにもまだ空きがあります。2年間しっかりとF1で経験を積んできてますし、特に今年は結果こそ残せませんでしたけどドライバーとしては手ごたえのあるシーズン、F1ドライバーとして自信を深めたシーズンだったので、それを少しでも見ていただいてどこかのチームを探せたらと思います。
Q.可夢偉選手はシーズン前のテストでマシンに乗っているが、最後の2戦で乗ったマシンと進化度の違いについて、どのように感じたか?
一貴選手は今回トヨタのマシンに乗ってみて、ウィリアムズのマシンとの違いは?
A.可夢偉 : 最後に乗ったテストが2009年2月のバーレーンです。その時もブラジルの時も乗りやすいと同じ印象を持ってたんですけど、全体的にクルマのレベルが上がったなと思います。
A.一貴 : コンディションもコンディションですし、なかなか直接比較できることは少ないんですけど、僕のとってはF1マシンはウィリアムズ以外に乗るっていうのは今回が初めての経験だったので、操作の手順であるとかスタートの手順であるとか、いろんなところで違いがあるので、非常に興味深かったです。どこがどうとかは言えないんですけど、クルマ自体の乗りやすさ、バランスというところはちょっと比較できませんね。
Q.可夢偉選手はトヨタF1チームとしての今日のラストランの感想は?
A.可夢偉 : いろんなことを言いたいことなんですけども、僕が14歳の時にFTRS(フォーミュラトヨタレーシングスクール)から始めて、その時から目標はトヨタのF1に日本人ドライバーとして乗ることだったんですけど何とかF1に辿り着いて、そこでこういう景気のせいでF1を撤退しないといけなくなって。本当にこれは誰が悪い訳でもないと思うんですけど、僕自身今までここまでこれたっていうのも皆が応援してくれたお陰プラス、トヨタが一番応援してくれたお陰だということだと思うんですよね。だからこういう重要な役割を演じたのは誇りに思うし、14歳の時にはこうなると正直自分でも思っていませんでした。でも考えると、あの時から毎レース結果を残そうという自分のやり方自体変わってないんですけど、それがきっかけでトヨタでここまでこられたっていうのを嬉しく思うし、正直なところこれが本当のスタートなんだなと分かっています。トヨタってところは家みたいなところで、これからF1の世界にそのトヨタがなくなってしまうので、一人でこの世界で戦っていかなくてはならない中、最後にこうやってトヨタのドライバーとして皆にこの姿を見てもらえて、本当に嬉しいと思います。
Q.F1撤退ということになって、トヨタとして何年にもわたってやってきた若手ドライバー育成の今後と、このふたりをどのようにサポートていこうと思っているか?
A.高橋 : 本当にふたりには申し訳ないと思っています。元々TDPを始めた時に若い子供達に夢をとやってきましたが、彼ら自身が努力してきてここまで上り詰めてこられたと思います。我々が何をしたというんではなく、彼ら自身で勝ち取った成果だと思いますし、我々から見ても実力でF1ドライバーになったし、今後もやっていけると思ってます。従いまして、トヨタとしては残念ながら今シーズン限りで撤退となりましたが、彼らとしては実力も将来もありますし、別の形でなんとか応援できたらなということで、今我々がチームとの間に立って話をさせていただいております。
夢を子供達に与えるのは大事なことだと思います。トヨタとしてはF1がなくなりましたけども、TDPというシステムは今後も続けていきたいと思います。そういう中で国内のSUPER GTやフォーミュラニッポンだけじゃないくて、若い子たちが実力で他のF1チームからお呼びが掛かることもあると思いますし、そういう形でも支援をしていきたいと思ってますので、今後も夢を持っていただけるように続けていきたいと考えております。
Q.ドライバーふたりは、F1の別のシートを得られなかった時はどうするのか? トヨタとしては、F1で走れなかった時にふたりをどう支援するのか?
A.可夢偉 : 正直なところ考えていなくて、何しようかなという状態なんですけど、今の時点でF1でやり残したことがたくさんあるので、見てくれてる人は見てくれてると信じて契約できることを望むしかないかなと思います。だからあんまりそれ以外のことは考えてないです。
A.一貴 : 僕も可夢偉くんと同じになってしまいますけど、今のところ残ることだけを考えて交渉をお願いしてますし、その後のことはそうなった時にしか考えないです。僕自身はF1の中で達成してないこともありますし、F1にこだわっていくつもりです。
A.高橋 : ふたりは実力でF1で戦っているドライバーだと思ってますし、来シーズン始まる直前まで、彼らがどこかのチームで乗れるようにまず頑張っていきたいということしか考えておりません。
Q.これまでの走りを踏まえた上で、来年F1に残ることに自信をどれくらい持っているか?
A.可夢偉 : 僕はお金があれば100%残れると思ってますけども、決めるのはチームだし、まずはオファーがこないと。難しいところですよ。どれくらい自信があるかなんて言われたところで、僕は100%自信があっても契約できるかとは全然関係がない別のものなので、絶対乗れるもんだと信じて準備するし、それに対してTDPが応援してくれるのを信用するしかないです、僕は。自信はお金以外では確実です(笑)
A.一貴 : 自信を表すのは凄く難しいですけど、ドライバーとしては自信を持って常にやっている状況なので、まあ自信があるからシートが得られるかっていう問題でもないので非常に難しい状況ではあります。でも今年から来年にかけてF1自体も大きく変わりますし、チームの中でのドライバーの移動も多いですし、シートが決まっている数も少ないのでチャンスはあると思ってます。状況によってチャンスが増えたり減ったりしますけども、ドライバーとしては自分自身の準備をしっかりすることしかできないので、それだけ集中していこうと思っています。
トヨタF1マシンをドライブする中嶋一貴