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【SUPER GT第6戦レースレポート:GT500】お互いのドライバーを信じて掴んだ勝利

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[スタート前のNo.38ZENT CERUMO SC430]

晴天の中で開催されたSUPER GT第6戦富士。55周で行われた決勝レースは、GT500クラスではNo.38ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)が優勝した。

2006年から使用しているSC430で2006年、2009年とチャンピオンを獲得しているレクサス勢。しかし、今季は大苦戦を強いられ、第5戦を終了した段階で0勝という状態が続いていた。そして迎えた第6戦、舞台はレクサス勢のホームコースである富士スピードウェイ。地元での決戦を前に、さらなる速さを手にするため、マシン後方部を中心とした大改良を行い、並々ならぬ意気込みで、今回のレースに臨んだ。

富士に照準を合わせて準備してきた甲斐もあり、予選ではトップ5をレクサス勢が独占。決勝もNo.39DENSO SARD SC430(石浦宏明/井口卓人)とNo.38ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)の一騎打ちの優勝争いとなった。

序盤からライバルを上回る速さをみせた39号車サードに対し、38号車セルモは、とにかく追いかけ続けてチャンスがくるのを待ち続けた。そのチャンスが訪れたのが残り5周。1位の39号車井口のペースが落ち、2位38号車セルモとの間隔が一気に縮まる。セルモの立川も、この瞬間を待っていたかのように一気に井口を攻略。残り3周でトップがコース上で入れ替わる劇的な展開となった。

★★ここがポイント(1)「ベテラン立川の判断が生み出した終盤のドラマ」★★
今回のサードとセルモのレクサス勢同士による優勝争い。前半戦は、前日の予選スーパーラップ同様に石浦宏明(サード)と平手晃平(セルモ)の一騎打ちの争い。なんどか平手が石浦の背後に付くシーンが見られたものの、結局追い抜くまでにはいたらず、後半戦の井口卓人(サード)vs立川祐路(セルモ)に全てがゆだねられた。

今季からGT500にステップアップし、SC430のマシンを駆る井口卓人。しかしGT500マシンの経験不足から、存在感のあるレースがここまで出来ておらず、井口自身苦しいレースが続いていた。今回も「井口がどこまで頑張れるか?」という部分に注目が集まったが、周りの心配を払拭するかのように、今までにない素晴らしい走りを披露。一時は2位立川を引き離すペースで周回を重ねていく。
この時の様子について、レース後の記者会見で立川は「井口のペースが思ったより速くて、大変なスティントになるかと思いましたが、とにかくタイヤを温存してチャンスを待ちました。300のマシンの処理で、一度離れてしまうと、再び追いつくのが大変でした。」と、井口とのマッチレースの時のことを振り返った。

とにかく必死に逃げたGT500ルーキー井口に対し、後ろから追いかけながらも、タイヤを温存してチャンスを待ったGT500大ベテラン立川。最終的にベテランの経験が勝機を手繰り寄せることになった。

残り5周を切ったところで、ずっとハイペースで走り続けていた井口のタイヤの消耗が進み、ペースが落ちる。そこを今まで温存していた立川が、一気に勝負をかけに行く。
「終盤になって、流れが良くなってきて、一気に追いつくことが出来ました。そこで温存したタイヤを使い切って、最後に抜く事が出来ました。(立川)」

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[レース後、インタビューに答える立川と平手]

★★ここがポイント(2)「お互いのドライバーを信じて掴んだ勝利」★★
こうして、残り3周でトップが入れ替わる大逆転劇で、今季初優勝を手にした38号車のセルモ。この勝利は“2人のドライバーを信じて自分の走りをする”というSUPER GTならではのレースをしていたのが勝敗を分ける鍵だったかもしれない。

SUPER GTの前身、全日本GT選手権の頃から大活躍し、特に予選のタイムアタックで強さをみせてきた立川祐路。今季も予選トップ10のみが出走を許されるスーパーラップでタイムアタッカーを担当してきた。しかし、今回は若手で今季からセルモに加入した平手晃平にスーパーラップという大役を任せた。それについて立川は「平手にアタックを任せることは、当初からの予定でした。今季も6戦目(富士でのレースも2回目)でチームとのコミュニケーションも慣れてきた時期に、平手も速いので任せようと予定していました。任せても、問題ないと思っています。」と、若い平手に実力を認め、それがチームにとってもアドバンテージになっているという表情をみせていた。

逆に予選スーパーラップ、決勝の前半スティントを任された平手。残念ながら両セッションともに39号車を石浦を攻略する事は出来なかったが、レース中はこのように考えていたそうだ。
平手「序盤は、相手の状況を見て、いけそうであれば前を抜いて逃げていこうと考えていました。実際に走り出してみたら、39号車も同じようなパフォーマンスで、特にどちらが勝っているということもなかったので、自分やミスやクラッシュがないように気をつけて、後半につなげれば、必ず立川さんが39号車を追い抜いてくれると信じていました。」

立川・平手の両ドライバーを含め、チームスタッフ全員が、それぞれの仕事をきっちりこなす事が出来れば、最終的に今回最大のライバルだった39号車を追い抜くことが出来ると、全員が信じて戦い続けた結果だったのかもしれない。

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平手から立川バトンタッチされたレース中のピット作業

SUPER GTを代表するドライバーである立川祐路だが、2009年第2戦の鈴鹿以降は勝利がなく、同じく2009年にGT500にステップアップしてきた平手晃平も、まだGT500での優勝経験がなかった。そして何より、今季のレクサス勢は苦しい戦いを強いられており、ここまで0勝。ホームの富士スピードウェイで何としても勝ちたいという思いは強かった。
その事については、このようにコメントした。
立川祐路「正直、嬉しいです!ここまでの戦いは、厳しいものがあったので今回も勝てるかどうか難しかったですが、(SC430のマシン開発に携わる)TRDさんが、今回勝てるマシンを用意してくれて、そのチャンスを物に出来ました。」
平手晃平「GT500にステップアップして2年半、ようやく優勝できて本当に嬉しかったです。」

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[念願の初優勝を手にし、スタッフと抱き合う平手]

今回の38号車の優勝により、ますます接戦になってきた2011年のSUPER GT GT500クラスのチャンピオン争い。残り2戦の勝負となる。
次回は10月2日に九州のオートポリスで第7戦が行われる。

『記事:吉田 知弘』