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【WEC】トヨタが2012年のWEC参戦計画を発表、ル・マン24時間耐久レースにも挑戦

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1月25日、トヨタはフランス・ポールリカールサーキットで、2012年FIA世界耐久選手権(WEC)の参戦体制を発表し、新型マシン「TS030 HYBRID」のお披露目も行った。

ドライバーには元F1ドライバーのアレックス・ブルツや、2011年フォーミュラニッポンでランキング2位となった中嶋一貴の起用も発表された他、1999年以来となるル・マン24時間耐久レースへの参戦も発表された。

[以下、リリースより]
トヨタは、1月25日からフランス・ポールリカールサーキットで、2012年FIA世界耐久選手権(World Endurance Championship; 以下WEC)に参戦するべくモータースポーツハイブリッドシステムを搭載した車両のテストを開始し、合わせて2012年参戦体制についても発表した。

トヨタのWEC参戦チームは、TOYOTA Motorsport GmbH(TMG)(ドイツ・ケルン市)を本拠とし、チーム名はTOYOTA Racing。参戦車の名称はTS030 HYBRIDとする。

TOYOTA Racingは、5月5日に開催されるFIA世界耐久選手権第2戦スパ・フランコルシャン6時間レースで、TS030 HYBRID をデビューさせる。

また、TOYOTA Racingは、第3戦ル・マン24時間(6月16・17日:フランス・ル・マン市)では、2台のTS030 HYBRIDを出場させる予定。
なお、このほかのレースへの出場は、未定であるが今後決定しだい発表する。

TS030 HYBRIDのドライバー・ラインアップは、1台はアレックス・ブルツ(Alex Wurz:37歳 オーストリア)、ニコラス・ラピエール(Nicolas Lapierre:27歳 フランス)、中嶋一貴(27歳 日本)が決定しているが、もう1台のドライバー・ラインアップに関しては検討中。また、アンドレア・カルダレッリ(Andrea Caldarelli :21歳 イタリア)が、ジュニア・ドライバー*としてTOYOTA Racingに加入した。 *ジュニア・ドライバー:研修生的位置づけのドライバー

TS030 HYBRIDは、1990年代のル・マン24時間で表彰台フィニッシュを達成したTS010とTS020の名を引き継ぐモデルで、TSはTOYOTA Sportの頭文字を取ったものである。

トヨタは、ハイブリッド・システムを採用してのFIA世界耐久選手権出場を発表した世界初の自動車メーカーとなる。これは、世界で3百万台以上のハイブリッド車を販売したトヨタならではのパイオニア的アプローチといえる。

トヨタがTHS-R (TOYOTA Hybrid System - Racing)と呼ぶTS030 HYBRIDのパワートレインは、最高のパフォーマンスを発揮する設計で、最新の3.4リッターV8自然吸気ガソリン・エンジンに、日清紡ホールディングスと開発したキャパシタ(蓄電器)を備えるハイブリッド・システムを採用している。

TS030 HYBRIDの初回テストでは、アイシン・エィ・ダブリュ製フロント・モーターシステムとデンソー製リア・モーターシステムが、現行レギュレーションの下でどのようなメリットがあるかを評価する。
ちなみに、現在のレギュレーションは、ブレーキングゾーンの間で駆動アシストに使えるエネルギーを500kJまでに制限すると共に、エネルギーの回生は2輪のみからと限定している。

最新のカーボンファイバー製LMP1シャシーはTMGで開発・製造され、車両の組み上げもTMGが行った。また、今回のテストに先駆け、システム機能の確認を目的に、1月11~13日のフランス・ポール・リカールで行われたTS030 HYBRIDのロールアウトも、TMGが担当した。

TS030 HYBRIDは、このロールアウトで夜間走行を含む数百キロを走破し、テスト・プログラムの初期段階から高い信頼性とパフォーマンスを見せた。

ポール・リカールのロールアウトでは、アレックス・ブルツとニコラス・ラピエール、また、TOYOTA Racingが2台で出場するレースにおけるドライバー候補である石浦宏明(30歳)がTS030 HYBRIDの走行を担当した。

現在、TOYOTA Racing のオフィシャル・パートナーとしては、デンソー(DENSO)、善都(ZENT)に加え、アイシン精機(AISIN)、新日本製鐵(NIPPON STEEL)、日清紡ホールディングス(NISSHINBO)、タカタ(TAKATA)、豊田合成(TOYODA GOSEI) とミシュラン(MICHELIN)が予定されている。

木下美明 チーム代表
「もちろん、ル・マンでは優勝したいと思っている。優勝は、このレースに出場する誰もの夢だと思う。しかし、非常に強いライバルを相手に戦えるようになるには学び、成長しなければならないと現実的に考えており、今年の我々の目標は、THS-Rパワートレインを主としたTS030 HYBRIDの性能レベルを見せることだ。ハイブリッドはトヨタのコア技術であり、モータースポーツの舞台でこれを見せることは重要であり、ラップタイムと燃料効率の両方でパフォーマンスのアドバンテージを発揮できることを証明したいと思う。ここまでたどり着くことができたのは、TMGと日本のモータースポーツ部で設計、開発、TS030 HYBRIDの準備に関わった全員の努力のおかげだ。またサーキットに戻れることになり、全員がとても興奮している」

パスカル・バセロン テクニカルディレクター
「TS030 HYBRIDの2大特性は、空力とハイブリッド・システムだ。ハイブリッド・パワートレインに関するレギュレーションでは、ブレーキング時のエネルギー回生が認められているため、このエネルギーを回生及び保存して放出、コーナー出口のスピードを上げ、ラップタイムの向上に繋げることができる。どのような性能レベルにおいても、ハイブリッド・パワートレインはこれを少ない燃料で行う事ができるため、我々はこの非常に重要なテクノロジーを耐久レースで使えることを楽しみにしている。開発段階でもうひとつ重要なポイントとなったのは、空力効率だ。TMGの開発チームは風洞とシミュレーションソフトを用いて空力コンセプトの最適化に力を注いだ。ロールアウトの際のフィードバックも良好だったので、今後数週間の開発作業に期待が持てると思う」

村田久武 ハイブリッド・プロジェクト・リーダー
「トヨタのモータースポーツ用ハイブリッド・システムは、開発に取り組んで来たこの数年間で大きく進歩した。ル・マン24時間というモータースポーツにおける究極の試練の場に、この技術を持ち込む準備ができたと感じている。ハイブリッド・システムを採用するということは、標準的な動力源と比べればもちろん、異なるチャレンジである。しかし、デンソー、アイシン・エィ・ダブリュ、日清紡ホールディングスといったパートナーと共同で開発に取り組んで来たTHS-R技術も、TS030 HYBRID の総合コンセプトの一部。この技術を用いてブレーキングゾーンの間で最高500kJのエネルギー回生及び保存を行い、フロントまたはリヤのモーターを通してこのエネルギーを放出することによって、クルマの加速性能向上に繋げることができる。トヨタのハイブリッド技術はすでに24時間レース(2007年 十勝24時間)で勝利を収めているが、今回は最新のTHS-Rで世界のモータースポーツに挑戦する。技術的には非常に厳しい挑戦となるが、我々はこれに臨む準備ができている」

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アレックス・ブルツ
「初めてTS030 HYBRIDを運転したが、クールの一言に尽きる。電力を使ってガレージを出るだけでも、とても未来的だった。クラッチを放すと内燃エンジンが作動し、古い友人が戻って来たような気がした。ソフトタイヤで走った時はかなりのダウンフォースを感じたので今後が楽しみだ。素晴らしく速いクルマになると思う。現時点でもとてもハッピーだが、私は分析してしまう性分なので、まだいろいろと作業が必要だとは思っている。メカニックやエンジニアの皆と一緒に仕事ができて嬉しい。TOYOTA Racingチームはとても国際的で仕事がしやすい。みんな非常にプロフェッショナルなので、とても居心地が良い。それは確かだ」

ニコラス・ラピエール
「ロールアウトの最初の印象は良かった。シャシーは本当に進んでいるし、ハイブリッド・システムの調子もとても良い。TS030 HYBRIDはステアリングに対する反応が良く、レスポンスが素早く効率的。基本的なダウンフォースレベルも高いので、ドライバーにとっては嬉しい。考え方が違うから、これまで乗ったクルマとは全く違う。ロールアウトは手応えがあったし、様々な点でクルマの可能性を感じることができた。まだ、やらなければならないことはたくさんあるが、力強いパッケージに仕上がっていると思う。白紙からのスタートで、エキサイティングな挑戦だ」

中嶋一貴
「TS030 HYBRIDの初走行が待ち遠しい。ロールアウトの際にアレックスやニコラスといろいろと話したが、大きな可能性を秘めたクルマであるのは明らかだ。TMGのドライビング・シミュレーターでは長い時間運転しているので、ヴァーチャルな世界の中ではクルマの事も分かっているし、ル・マンのコースのことも分かっている。やっと本物を運転する時が来た。自分にとっては素晴らしい挑戦だし、TOYOTA Racingと共にFIA世界耐久選手権に出場するのが本当に楽しみだ。ハイブリッド技術を携えてのル・マンへのカムバックはトヨタにとっては大きなチャレンジだと思うが、我々ドライバーにとっても大きなチャンスだと思うので、SUPER GTレースでの経験が活かせることを願っている。このプロジェクトに関わることができて最高だ。今シーズンは本当に頑張りたい」


『写真:TOYOTA MOTOR CORPORATION』