【F1】第7戦カナダGP:プレビュー

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『Photo:Pirelli』

今週末は第7戦カナダGPが開催されるF1世界選手権。ここまで6戦を終えて6人のウィナーが誕生し、F1史上でも例を見ない大混戦のシーズンとなっている。今回はカナダGPの見どころをご紹介していく。

【毎年“荒れる”カナダGP】
今年もカナダGPの舞台はケベック州モントリオールにあるジル・ヴィルヌーヴサーキット。市内を流れるセントローレンス川に浮かぶ人工島「ノートルダム島」内にある公園の周回道路を利用したサーキットで、分類としては公道コースになる。
そのため、通常の常設サーキットと比べると滑りやすい他、コースとコンクリートウォールの距離が近いため、前回のモナコ同様に「コースアウト=クラッシュ」というリスクが常に付きまとう。

2012カナダプレビュー1『Photo:Pirelli』
『Photo:Pirelli』

特に最終シケインのデ繰り部分は、過去に何人ものチャンピオン経験者が餌食となった“Wall of Champions”と呼ばれる壁がある。ここは、予選ではタイムを詰めるための最後のポイントであり、決勝レースでは直前のシケインが追い抜きポイントとなっているため、攻め過ぎてウォールにヒットしてしまうケースがよくある。しかし、このウォールにギリギリまでちかづかないと予選では好タイムが出ない。ワールドチャンピオンを争うF1ドライバー達の腕と度胸にも注目だ。

【“セーフティカーを上手く利用できるか?”と“タイヤマネジメント”が勝敗の大きな分かれ目】
このようにコースアウトしたマシンは、大体がウォールの餌食となり、マシン回収のためにセーフティカーが出動することがよくある。昨年は天候不良の影響もあり、レース中に計6回もセーフティカーが出動した。こういった展開の変化にうまく対処できるかが、カナダGP優勝への大きなポイントとなってくる。

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『Photo:Pirelli』

そして、今季のF1で勝敗の勝敗を分ける重要な要素となっているタイヤ。今回、ピレリタイヤはカナダGP用としてスーパーソフト(赤)とソフト(黄)という2種類のドライタイヤを盛り込んでいる。この組み合わせは前回モナコGPと同じだが、前回以上にレース中の平均スピードが上がるカナダGPでは、早い段階でタイヤ消耗していく事が予想される。さらに昨年は雨レースで、各チームともに実際のレースデータが取れていない。長丁場の決勝レースでどのようにタイヤを使っていくかも、今回の大きなポイントのひとつだ。

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『左:スーパーソフト、右:ソフト(Photo:Pirelli)』

【大混戦の2012シーズン。7人目のウィナー候補は?】
ここまで6戦を終えて6人のウィナーが誕生、史上最も激戦となっている今シーズンのF1。果たして今回の第7戦カナダGPでは7人目のウィナーが誕生するのか?注目が集まっている。
このカナダGPで勝つためには、前述の通りセーフティカーなどの急激な状況変化に対応できか?タイヤマネジメントを上手くできるか?がポイントになってくるが、もう一つの要素として「ストレートスピード」も重要視されてくる。

ジル・ヴィルヌーヴサーキットは、長いストレートをシケインやヘアピンなどの低速コーナーでつなぐ「ストップ&ゴー」タイプのレイアウトとなっており、ストレートで横に並びかけ、終りの低速コーナーでのブレーキングで前に出るという抜き方を仕掛けやすいコースなのだ。

ジル・ヴィルヌーヴサーキット
ジル・ヴィルヌーヴサーキット

そのため、ストレートスピードの良し悪しが重要になってくるのだが、その点で今季注目を集めているのがロータスチーム。今季は中団グループからのスタートが多い彼らだが、「ロータスルノー E20」が誇るストレートスピードを武器にライバルたちを追い詰めるシーンが何度も見られている。

特に第4戦バーレーンGPでは、3年ぶりにF1復帰を果たしたキミ・ライコネンが、ストレート終りで現王者のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)を追い詰める活躍をみせた。今回のカナダGPも、ロータス勢が得意とするストレートが多く存在しており、これが有利に働いてくる可能性が十分ある。
さらに、相方のロマン・グロージャンより“F1での勝ち方”を知っているエースのライコネン。久しぶりにファン待望の「シャンパン一気飲み」が見られるかもしれない。

F1 BAHRAIN GRAND PRIX 2012
今季初優勝の期待がかかるライコネン(写真左)『Photo:Pirelli』

【小林可夢偉、荒れたレースを味方につけられるか?】
前回モナコでは、スタート直後のアクシデントに巻き込まれ、リタイヤという悔しい結果に終わってしまった小林可夢偉(ザウバー)。今週末は、そのリベンジに期待がかかる。
ここカナダGPは、昨年の決勝レース中に一時2位を快走する活躍を見せた。急激な天候変化や大雨などで2時間の赤旗中断があるなど、大荒れのレースとなったが、こういった“急激なレース展開の変化”を上手く利用して2位に浮上した。後に本人も「2011年のベストレースのひとつ」と話していたレースだ。

2012カナダプレビュー4『Photo:Pirelli』
『Photo:Pirelli』

前述にもあるように、セーフティカーが出動する機会が比較的多いカナダGPは、毎年「荒れるレース」を上手く利用したドライバー・チームが勝利を手にしている。ザウバーマシンにとって、このジル・ヴィルヌーヴサーキットは決して相性の良いサーキットとは言えないかもしれないが、こういった混乱を上手く利用して上位進出してくる可夢偉に期待したい。

いよいよ日本時間の8日(金)夜に開幕するカナダGP。今回はシリーズ唯一の北米ラウンドということで、決勝のスタート時刻も深夜3時とLIVE放送で観戦するのは難しいレースだが、毎年中身の濃いレースが展開されるカナダGP。是非、予選から決勝までチェックしていただきたい。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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