【SF】「ここまで長かった・・・」参戦4年目、待ちに待った山本尚貴の初表彰台

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 2013年のスーパーフォーミュラ第2戦オートポリス。予選は悪天候で順延になり、決勝もウエットからドライに変わっていくという難しいコンディションの中、アンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)が優勝、ロイック・デュバル(KYGNUS SUNOCO Team LeMans)が2位とWECに参戦するトップドライバーの強さが光り、逆に開幕戦では上位を独占した日本人勢が苦戦したレース。そんな中、スタートから安定した走りでシリーズ戦初の表彰台を手にしたのが山本尚貴(TEAM無限)だった。満面の笑みでポディウムに立つ彼の姿は、多くのファンが、長い間待ち続けた瞬間でもあっただろう。参戦4年目、何度も届きそうで届かなかったシリーズ戦での表彰台。ポディウムで見せた笑顔の奥には、本当にたくさんの苦労があった。

【ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。幸先の良いデビューシーズン】
 2010年に名門ナカジマレーシングから国内トップフォーミュラ(当時フォーミュラ・ニッポン)のカテゴリーにステップアップした山本。当時からチームのエースだった小暮卓史ばかりが目立っていたが、第4戦もてぎで4位に入るなど、20.5ポイントを獲得。その年のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

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 彼に初めてスポットライトが当たったのが、このシーズンから始まった特別戦「JAF GP富士スプリントカップ」そのレース2で6番手からスタートした山本は、序盤ですぐ2位に浮上するとトヨタ陣営のエースであるアンドレ・ロッテラーとの激しいマッチレースを展開。これには来場した3万人近いファンも彼の走りに釘付けとなった。結果、ロッテラーを攻略することは出来ず2位に終わったが、フォーミュラ・ニッポンで初の表彰台を経験。“山本尚貴ここにあり!”というレースを披露した。

【初ポールポジションから、なかなか結果に繋がらない日々】
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 この流れを維持したまま迎えた2011年シーズン。TEAM無限に移籍すると、いきなり開幕戦の鈴鹿でポールポジション。期待の若手が台頭してきたとあって、注目度はさらに大きなものになっていった。翌日の決勝日、優勝に一番近いポジションからスタートを切った山本は、やや出遅れてしまい1コーナーで3位に後退。ここで焦りが出たのか2コーナーで他車と接触しスピン。初優勝の夢が一瞬にして消え去ってしまった。幸いリタイアはまぬがれ、なんとか最後まで走り切った山本。チェッカーの後、パルクフェルメにマシンを止めるとヘルメットと被ったまま一目散に自分のピットへ。結果を残せなかったという悔しさのあまり、モーターホームの奥でずっと涙を流し続けた。“国内最高峰の舞台で勝つことは、そんなに簡単なものではない”そう感じた瞬間だったのかもしれない。

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 一度つかみ損ねたチャンスは、なかなか訪れてはくれなかった。続く第2戦オートポリスで5位に入ったものの、その後はトラブルや不運なアクシデントが続き、入賞する機会も減ってしまった。その悪い流れは2012年も引きずることに。開幕戦鈴鹿では2年連続PPを狙いに行ったQ3で攻めすぎてクラッシュ。第2戦オートポリスでは予選2位を勝ち取るも、車検違反でタイム抹消。その後もなかなか思うようなレースが出来ず、何度も悔しい思いをする日々が続いた。その間にも、塚越広大や伊沢拓也といった同世代のホンダドライバーが初優勝を果たし、チャンピオン争いを展開。シーズン後半は彼から笑顔が消えてしまうことも少なくなかった。

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【過去のことは忘れて、もう一度ゼロからスタート】
 復調のきっかけを掴み切れないまま迎えた2013年シーズン。鈴鹿サーキットで行われた開幕前の合同テストに登場した山本。「初ポールの事は“良い意味”で忘れることにして、もう一度ゼロからという気持ちで挑戦したい。」と笑顔で語る表情は、昨年までとは異なり、どこか自信に満ち溢れている様子だった。良かった事も悪かった事も、一旦は“過去の事”と整理をして再出発を切ると、テストでは好タイムを連発。少しずつ流れを取り戻し始めた。さらに気持ちを切り替えるためにヘルメットの色も変更。「去年は赤色にして良いことがなかったので思い切って変えました」と、今までのイメージとは異なる黄色にし、まさに心機一転で2013シーズンに臨んだ。

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 開幕戦、予選5番手の山本は序盤からアグレッシブに攻めていく。途中のピットストップで4位に浮上すると、3位松田次生(Lenovo TEAM IMPUL)との差をみるみるうちに縮め、前を伺った。しかし元王者を攻略することはできず、最後はトラブルで3位に後退した小暮に手が届きかけたが、わずか0.065秒差で4位。またしても、チャンスをものに出来なかった。しかし、レース後の彼の表情は予想とは裏腹に何か手応えを掴んだ様子で、「あと少しのところで表彰台に届かなかったのは残念ですが、最近はこの位置でレース出来ていなかったので、間違いなく今後に繋がると思う。」と、悔しい表情を見せながらも、心の中では“以前より確実に良くなっている”という自信が芽生えていたような気がした。

 あれから1ヶ月半。舞台は第2戦オートポリスへ。雨となった土曜日のフリー走行から2番手タイムと好調を維持。残念ながら悪天候のため午後の予選はキャンセル。決勝日朝に順延されたが、ここできっちりと好タイムを記録し3番グリッドを手に入れた。午後の決勝は、雨も止み路面が乾き始める難しいコンディション。一つのミスも許されない中、昨年や一昨年よりも遥かに成長した山本は安定したレース展開を披露。見事、3位の座を守り、確実にゴールに向かっていた52周目。視界不良のため赤旗中断。そのままレースは終了となり、山本のシリーズ戦初表彰台が決まった。

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 「スタート自体よく決まり、2番手に立つことができました。途中のピットストップも完璧で、ロッテラー選手の前に出ることができたところまでは良かったです。でもその後、すぐ彼とのペースの違いを感じることになり2位を守り抜くことはちょっと難しいなと思いました。後半はポジションがポジションだったので、ミスなく、攻めることも忘れず、チェッカーまでがんばって走りました。やっと表彰台に登れて素直に嬉しいです。ここまで長かったな・・というのが一番の印象ですね。」

 2011年の初PP以降なかなか思うようなレースが出来ず、何回も、何回も、何回も、悔し涙を流してきた。その苦しい日々を乗り越えて掴んだ今回の3位表彰台。そこで見せた彼の笑顔は、今までの中で一番輝いていた。

【次はちゃんとウイニングランをしたい】
 念願の初表彰台。嬉しいは嬉しいのだが、レース後の記者会見で山本はこう続けた。「個人的には、ちゃんとチェッカーを受けて、応援してくれたファンの方やチームスタッフの前で手を振りたかったですね。でも赤旗中断となり、それができませんでした。なので、次の目標ができました(笑)。今度は気持ち良く手を挙げて、みんなの前でウィニングランをしたいです。」

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 “今度は、ちゃんとウイニングランをしたい”。本人はハッキリとは言わなかったが、そこには“優勝”という次なる目標も含まれていることは間違いないだろう。もちろん、国内トップフォーミュラで勝つということは表彰台に上がる以上に難しいこと。だが、今年の彼ならきっとやってのけるのかもしれない。次の舞台は富士スピードウェイ。過去3年間はトヨタエンジン勢が表彰台を独占しており、ホンダエンジン勢にとってアウェイとなる。もしかすると、ここまで以上に厳しいレース展開が待ち受けているかもしれないが、春の合同テストでもライバルに対抗できるタイムを記録しており、上位に進出するチャンスは十分にある。

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 今回の表彰台でまた一つ成長を遂げた山本。この勢いで今度は表彰台の一番高いところで最高の“ナオキ・スマイル”が見られることを期待したい。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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