【INDY】2013第8戦テキサス〜Point of the Race〜:琢磨、次につながる11位フィニッシュ

©INDY CAR
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 現地時間の8日夜に決勝が行われた2013年のIZODインディカー・シリーズ第8戦テキサス。佐藤琢磨(AJフォイト・レーシング)は、予選前にギアボックスのトラブルの影響で21番手からのスタート。決勝では一時4位まで挽回するも、途中のフルコースコーションなどのタイミングが噛み合わず、結局11位でフィニッシュした。序盤の優勝(第3戦)や2位(第4戦)を考えると決して良いリザルトとは言えないかもしれないが、今まで以上に“次につながる”収穫があったレースだったと思う。

インディ第8戦テキサス:レースレポート

【悪い流れはプラクティス1でのギアボックストラブルから】
 予選日のプラクティス1回目。琢磨はギアボックスにトラブルを抱えてしまう。その内容はかなり深刻なもので、チームは早々にセッションを切り上げてマシンの修復作業に取り掛かった。しかし、なんとか予選のアタックまでに修復作業が完了したものの、ピットエリアにマシンを移動する締め切り時間が過ぎてしまっており、タイムアタックをするチャンスを失ってしまった。第5戦インディ500同様に1台ずつがコースに出てアタックする形式。順番はくじ引きで決められ、琢磨は5番目だった。この順番の早さも災いする結果となってしまった。

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 何もすることが出来ずに終えた予選は23位。その後、決勝に向けての最終プラクティスセッションが行われれ、走行を再開した琢磨は6番手タイムを記録。予選で作れなかった良い流れを掴んだかに思えたが、色々なデータを収集するために必要な走行距離は全然足りていなかった。

 これが、マシンが完全に直った決勝レースでも響くことになる。他車のグリッド降格ペナルティなどで21番グリッドからスタート。序盤からペースもよく徐々に順位を上げていった。しかし約50周あるスティント(前のピットインから次のピットインまでに走るパート)のうち、10周目付近からラップタイムの伸びがなくなり、20周目を過ぎると明らかなペースダウンが見られ、順位もいくつか落としてしまった。これについて琢磨は「タイヤの消耗が激しかった。いいのは走り出して7周だけで、そこから先はグリップが下がり、マシンのバランスも崩れていった。」と当時の状況を振り返った。各スティントともに早めにきてしまうタイヤの摩耗に苦しんでいたのだ。おそらくマシンセッティングを合わせ切れなかったことが原因と考えられるが、それらも予選日のプラクティスでしっかり走りこんで、ちゃんとデータを集められていれば防ぐことができたはず。直ったはずのギアボックストラブルは、こんなところまで影響を及ぼし、苦しいレースを耐え忍んでいたのだ。

【今回もコーションのタイミングが噛み合わず】
 タイヤの消耗で苦しめられながらも、粘り強く周回を重ねた琢磨は、フルコースコーションのタイミングも上手く利用し、1回目のピットストップで大きく順位をあげ4位に浮上。しかし、その後はコーションのタイミングが噛み合わず、彼のレース展開を不利なものにしていった。

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 2回目のピットストップを109周目に終えた直後にコーション。ここでピットに入っていなかった上位陣が一斉に作業を済ませ、順位を落とすことなくコースに復帰した。これにより琢磨は14位まで後退。レース前半でコツコツ稼いできた順位が一気に水の泡となってしまった。その後もトップ10圏内が狙い激走。残り63周というところで3回目のピットストップを済ませた。ここからの第4スティント中に万が一フルコースコーションになれば、燃料をセーブしてチェッカーまで行ける計算。そうすれば上位進出が見込めたのだが、今度は出て欲しい時に限ってグリーンの状態が続き、207周目に4度目のピットインで後退。最後までプッシュし続けたが、11位でフィニッシュとなった。初優勝をした第3戦ロングビーチではコーションのタイミングも全て味方してくれたが、その幸運は何度も続くものではない。琢磨にとって今回のテキサスは我慢のレースだった。

【苦しいレースから掴んだ“次につながる”要素】
 結果トップ10圏内でのチェッカーは叶わなかった今回。しかし、予選日でまともに走れず、セッティングもしっかり合わせ込めていない状況の中で10ポジションアップ(21位スタート→11位フィニッシュ)は大きな意味を持つと思う。

 まずはプラクティスでの走行データに乏しかった中でも、しっかりトップ10圏内でレースできるだけのスピードを決勝で取り戻していた部分だ。これは琢磨を中心にAJフォイト・レーシングのチーム全体でシーズン序盤からマシン作りに取り組んできた結果が現れているのだろう。どこのコースへ行っても、ある程度のポジションで常に走行できるポテンシャルを持った“カーナンバー14”が出来上がりつつあることの証。これは次回以降のレースにも期待できるプラス要素だ。

 そして、もう一つは最後まで粘り強く追い上げた事。途中、フルコースコーションのタイミングなど不運もあって順位を落とすシーンがあったが、ファイナルラップまで攻め続け11位というポジションをゲット。これで19ポイントを稼いでトータル194ポイント。僅かではあるがランキングを1つ上げて5位に浮上した。第5戦インディ500から始まった6月の5週連続のレースウィーク。なかなか琢磨に流れが傾かないレースが続いているが、その中でもこうして少しずつまとまったポイントを稼いで行くことが、必ずや後半戦のチャンピオン争いで活きてくることだろう。

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 前述でも触れたが、序盤の好成績から比べると少しだけ低迷気味。我慢のレースが続くかもしれないが、今年の琢磨は確実に昨年までとは違うという“中身の濃い”レースを見せてくれている。そんな感想を抱かせてくれた第8戦テキサスだった。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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