【F1】2013イタリアGP〜Point of the Race〜:フェラーリの聖地で見えた“レッドブルとの差”

©Pirelli
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 2013年のF1世界選手権も、いよいよチャンピオン争いが佳境を迎え始めている。8日(日)には第12戦イタリアGPの決勝レースが行われ、現在ランキング首位のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)がポール・トゥ・ウィン。4年連続チャンピオン獲得に向け、また一歩前進するレースとなった。今季6勝目を手にし、表彰台で喜ぶベッテルに対し、2位のフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)は、笑顔を見せることがなかった。ここイタリア・モンツァはフェラーリチームにとっては地元であり聖地。この日も大勢の熱狂的フェラーリファン“ティフォシ”が、彼らの勝利を信じてサーキットに駆けつけ、チェッカーが降られるまで応援を続けた。そのティフォシの期待に応えるべく、今回のフェラーリは「総力戦」で最大のライバルに挑んでいた。

【マッサを使って予選時のストレートスピード向上】
 現状、マシンのパフォーマンス面ではレッドブル勢の方が圧倒的に有利な状態。ここ数戦、ガチンコ勝負を挑んでも終わってみるとベッテルを予選で上回ることができず、決勝では10秒以上の大差をつけてしまわれる。だからと言って、ここモンツァでは負けることは絶対に許されない。そこでフェラーリは伝統的なチームプレー「ファーストドライバーを勝たせるための再優先計画」で組み立てた。

©Pirelli
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 まず予選では、少しでもストレートスピードを稼ぐため、相方のフェリペ・マッサを前に走らせ、そのスリップストリーム(前のマシンを“風の盾”にするような感じで後ろに入り込むことで空気抵抗がなくなりスピードが上がる現象)を利用してスピードアップを狙った。しかし、これは近づきすぎても離れすぎても効果がなくなったり逆にタイムロスに繋がってしまうため、金曜日から何度もランデブー走行を繰り返し練習した。

 そして迎えた7日(土)の公式予選。Q2で実際にトライをするものの、距離が近過ぎでベストタイムは奪えない。そこでの情報を両者で整理してQ3で再度挑戦するが、今度はマッサが先行し過ぎてスリップストリーム状態に入ることができず、ベッテルを食い止めることが出来なかった。それだけでなくマッサの方が好タイムを叩き出してしまい、アロンソは想定外の5番グリッドからスタートを余儀なくされてしまう。総力戦で挑んだつもりが、逆にバタバタする原因となってしまったフェラーリ。「ベッテルに逃げられたら手も足も出ない」という事は彼らも十分知っていただけに、この予選結果は大きな痛手となってしまった。

【レッドブルのチームプレーに惨敗だったフェラーリの決勝】
 レッドブル勢のフロントロー独占で迎えた決勝レース。スタートでは4番手のマッサが頑張り直後に2位を奪う。ここで一気にベッテルを捉えられればベストな展開だったのだが、相手もその事は十分に予想しており、得意の序盤で一気に逃げてしまう作戦に出る。DRSが解禁となった3周目にアロンソがマーク・ウェバー(レッドブル)をパスし3位に浮上。その後マッサも抜き2位に上がる。しかし、この時点でベッテルは4.4秒前方。今回も完璧に逃してしまった。

 そのまま為す術もなく、とにかく追いかけ続けなければいけない展開となったアロンソ。後ろにはマッサがウェバーを抑え込む形で3位をキープしており、逆転のために前だけに集中して走れる状態は整っていた。予選同様にマッサの力を最大限借りてのチームプレー。だが、これも王者レッドブルの“チームプレー”の前には無力に近かった。

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 23周終わりにベッテルがピットイン。予定通りミディアムからハードに交換してコースに復帰するが、この11秒後方を走っていたウェバーも同時にピットインさせて同じ周回で2台ともタイヤ交換を済ませてしまう。F1の場合、ピット作業エリアは1チームにつき1つしかない。そのためタイヤの消耗具合の関係上、いくら同じ周回で2台とも入れたくても、その準備等の理由により1台はもう1周待たなければいけないことが多い。しかし、レッドブルはベッテルがタイヤ交換を行っている間に、すでにウェバー用のタイヤを裏で準備し、作業エリアを離れた瞬間にタイヤを瞬時に入れ替え、直後にやってきたウェバーを出迎えた。両者の間隔が10秒離れている場合、理論上では可能な方法ではあるが、時間がない中でタイヤの入れ替えなど多くの作業を行うため、間違ったタイヤを渡してしまうなど混乱してしまうケースがほとんど。しかし、チャンピオンチームはこういった部分も事前に練習しており、いざという時にしっかり対応できる体制をメカニックやチームスタッフ1人1人が整えていたのだ。

 これによりベッテル、ウェバーともにベストタイミングで新品タイヤを手に入れ、ベッテルは引き続き逃げを打ち、ウェバーはマッサ逆転のためプッシュ。見事翌24周目で逆転に成功した。アロンソは少し引っ張り27周終わりでピットインするも、コースに復帰する頃にはベッテルは10秒前方。さらに後ろからウェバーが迫っているという展開に。総力戦で勝利を手にするはずだったが、結局ベッテルを捕まえることは決勝レースでも出来なかった。

【敵地モンツァで勝利したベッテル、4連覇達成へカウントダウン開始?】
 逆転タイトルのためには何としてもチームの地元であるモンツァでポイント差を縮めたかったアロンソとフェラーリチーム。そのためにマッサを半ば犠牲にしてでも総力戦で挑んだが、結果的に王者ベッテルの勢いを食い止めることは出来なかった。ただ、フェラーリが今回遂行した戦略は決して間違っていなかったと思う。現在はチームオーダーも認められており、ファーストドライバーを勝たせるために影で献身的にサポートするセカンドドライバーという構図もフェラーリが黄金時代を築いてきた時には欠かせない戦略だった。ただ、予選でのスリップストリーム失敗。決勝も序盤から逃げられてしまいピット作業で逆転されるなど、各要素の“精度”という部分が100%でなかった事は確か。それに対しレッドブルはわずか10秒足らずしか猶予がない同一周回のピット作業をノーミスで決めてみせるなど、1度しかないチャンスでチーム全員が100%の力を発揮。それがベッテル優勝、ウェバー3位という結果に繋がった。

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 まだ7レースも残っている中で話すのは時期尚早だが、これがドライバーズ(ベッテルvsアロンソ)で53ポイント差がつき、コンストラクターズ(チーム)でも104ポイントと大差をつけられてしまった要因の一つなのかもしれない。もちろん、彼らも決して最速ではマシンでベストを尽くし、毎戦のように表彰台の一角をゲットしていることは確かだが、それをピット作業など”マシン意外の部分”でも上回っているレッドブルチーム。このまま行けばベッテルの4連覇達成もカウントダウンが始まったと言えるかもしれない。まだ自力で決めるには数レース必要ではあるが、この後のシンガポールと韓国で万が一アロンソがポイントを取りこぼしてしまう場面が発生すれば、早ければ第15戦日本GPあたりで達成する可能性もある。追いかけるアロンソにとっては、本当に踏ん張らなければならない正念場の1ヶ月になりそうだ。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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