【SGT】1年ぶりのGT300フル参戦が決まった井口卓人「鈴鹿での勝利で流れが全て変わった」

©T.Yoshita/KANSENZYUKU

 スバルは東京オートサロン2014が行われた10日(金)に、今シーズンのSUPER GTの参戦体制を発表。昨年いっぱいで勇退した山野哲也に代わり、昨年の鈴鹿1000kmで第3ドライバーとして活躍した井口卓人の起用を決定。佐々木孝太とのコンビでシリーズチャンピオン獲得を目指すことを発表した。井口にとってはSUPER GTでのフル参戦は1年ぶり。やはりシート獲得の決め手は昨年の鈴鹿1000kmだったという。

 「フル参戦は1年ぶりなので、シーズンを通して参戦できることに対して、素直に嬉しいです。やはり昨年の鈴鹿で勝ったことが非常に大きかったですね。あれがターニングポイントになったと思っています。その後も早い段階で2014年フル参戦のお話を頂き、辰巳総監督には即決でお返事させていただきました。1年を通して勝てる体制のチームで走ることが僕の中では凄く大事だったので、スバルのBRZはクルマも速いですし、経験あるチームですし、そして凄く速い佐々木孝太が選手パートナーということで、すべての要素が揃っていると思います。」

 2008年にGT300初参戦。2010年には国本雄資とのコンビで初優勝を飾ると、翌2011年にはGT500クラスへステップアップを果たす。何度も優勝争いに絡む走りをみせたが惜しくも結果につなげることができず未勝利でランキング7位。2012年は再びGT300に戻り、長年お世話になったトヨタを離れてLMP MOTORSPORT(イカ娘フェラーリ)から参戦したがクラス21位と低迷。ついに2013年はフル参戦の機会を失い、我慢のシーズンを強いられる事になった。

 「昨年は本当に辛かったですね。実際に色んなチームとも参戦について話はあったんですが、自らスポンサーを持ち込まなければいけない状況。自分でお金を払ってレギュラーシートを確保するのであれば、ちょっと我慢して鈴鹿のような大きなチャンスにかけてみようと決めて準備していました。」と、当時のことを振り返った井口。GAZOO RACINGの一員としてニュルブルクリンク24時間レースへの挑戦やスーパー耐久にも参戦しながら国内最高峰レースで再びチャンスを掴もうと我慢の日々が続いた。

 その中で巡ってきたのが第5戦鈴鹿1000kmでのスバルBRZ第3ドライバー枠だった。直前の合同テストには参加できたものの、レースウィーク中はレギュラーの2人が優先で走ることになるため、まさに“ぶっつけ本番”で決勝レース。「土曜の練習走行で数周走っただけで、いきなり決勝だったので、正直感覚を取り戻せるか不安だった」だったというが、チームからも大きな期待がかかる1戦で、力強い走りをみせた。

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 スタート直後から大量リードを築いた佐々木からバトンを受けとると、一発勝負というプレッシャーを跳ね除け、全くミスのない走りで後続をさらに突き放す走りを披露。この活躍がチーム全体の原動力の一つになり、BRZの初優勝をもたらした。今までは勝負どころでミスが出てしまい勝利を逃したことが多かったが、この鈴鹿では1回のみのチャンスでチームが求めている仕事を完璧にこなした勝負強さが評価されたと同時に彼の中でも大きな自信につながったという。

 「あの鈴鹿以降は流れが急に良くなって、自分でも“どうしたんだ?”と聞きたくなるくらい変わっちゃいました。特に何かを意識したとかではなかったのですが、多分これまで我慢していたものや、フル参戦出来なかった悔しさが爆発して良いエネルギーになったのではないかと思います。このレースを機に全て流れが変わっていきました。」

 こうして掴んだ念願のレギュラーシートだが、そこに昨年まで座っていたのはスバルBRZのエースとして長年チームを引っ張ってきた大ベテランの山野哲也だった。2012年に登場したGT300仕様のBRZのテスト開発に最初から携わり、レースでもマシン開発の面でもスバル陣営には欠かせないエースドライバー。しかし後進にシートを譲るために昨シーズンいっぱいでの勇退を発表。井口はそれを引き継ぐ形となり、周囲からの期待は大きなものとなっているに違いない。

 「プレッシャーはもちろんありますね。昨年(スポット参戦時)は1回だけ結果を出せばよかったのですが、今年はシーズン通して安定した結果を求められると思います。昨年の鈴鹿でも記者会見などで話していましたが、なぜ僕がスバルの一員として選ばれたのかを凄く考えていかなければいけないなと思っています。なので、色んな意味で大人にならなければいけないと感じています。でも今はどちらかというとワクワク感しかなくて、早く開幕戦を迎えたいです。ライバルとのBOPも関係もありますが、ベースは良いクルマだし経験のあるチームなので、自分たちが持っている力をしっかり100%引き出せれば、結果はついてくると思います。」

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 今年はSGTに加え、GAZOO RACINGからスーパー耐久とニュルブルクリンク24時間にも参戦するなど超多忙なシーズンになるが、その表情には不安が全くなく、逆に楽しみで仕方がない様子。最後にフル参戦を待ち続けて応援してくれたファンに対して井口は「昨年は開幕前にシートがないという話をブログでしても、皆さんから“それでも応援します!”と温かいメッセージをいただいて本当に励みになりました。そういった悪い状況でも応援し続けてくれたファンの皆さんに、今年は3つのレースに出られるので、全てで結果を出したいなと思います。今年も頑張りますので、皆さん応援よろしくお願いします!」と力強く語ってくれた。

 昨年SGTを離れたことによって色々なものを経験・吸収し、精神的にも大きく成長した井口卓人。今年もチャンピオン候補の一角と目されているスバルBRZを駆り、どんな走りを我々にみせてくれるのか?非常に楽しみなシーズンになりそうだ。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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