【SF】2015第3戦富士:プレビュー(1)「優勝候補は10人以上…シーズン最激戦の富士ラウンドへ」

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今週末の7月18・19日、静岡県の富士スピードウェイで2015年の全日本選手権スーパーフォーミュラ第3戦が開催される。

4月の鈴鹿サーキットで開幕した今シーズン、第2戦は7年ぶりの開催となった岡山国際サーキットで行われ、両レースとも最後の最後まで白熱した争いが繰り広げられた。そして舞台は、首都圏から最も近い富士スピードウェイへ。今年は開催時期が1週間遅れ、3連休中のレース開催。これを機に現地へ足を運んでみようと思っている方も多いだろう。

2015年はF1で活躍していた小林可夢偉がフル参戦。これまでは鈴鹿(F1日本GP)でしか観られなかった彼の勇姿が、今年はここ富士でも観ることができるのだ。この他にも今年のSFは強者揃い、中嶋一貴、山本尚貴、アンドレ・ロッテラー、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラといったチャンピオン経験者をはじめ、昨年GP2で活躍した伊沢拓也、F1テストドライバー経験のあるジェームス・ロシター、アンドレア・カルダレッリなど、挙げれば切りはないほどトップレベルのドライバーが揃っている今年のSF。予選Q1から0.001秒のミスすら許されないシビアなレースが毎回展開されている。

その中でも、今年の富士はここ数年になく激戦になる予感。今回はほんの一部ではあるが、その見どころを紹介していく。

【中嶋一貴、WECでの事故から復活!夏の富士2連覇なるか】
第3戦に向けて大きなニュースと言えば、2014年王者中嶋一貴の復帰。4月末にスパ・フランコルシャン(ベルギー)で行われたWEC第2戦で大クラッシュ。脊椎損傷という重症を負った。この治療に専念するため5月の第2戦岡山は欠場。しかし、その後は順調に回復し6月のル・マン24時間レースで復帰。満を持して第3戦富士に登場することになる。

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ここ富士は昨年の第2戦(Race2)でロッテラー、第3戦では一貴が優勝しているなど相性の良いコース。特に一貴にとっては2年連続チャンピオンを考えると、そろそろ優勝がほしいところ。国内では4月以来となるレースでどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか?目が離せない。

【今週末は初の“赤ランプ装着”石浦宏明、初タイトルに向け富士でも勝利を目指す】
岡山国際サーキットでの第2戦。小林可夢偉との激闘を制し、見事国内トップフォーミュラで初優勝を手にした石浦宏明。開幕戦での5位を合わせて合計15ポイント。今回の富士では初めてポイントリーダーを証である「赤ランプ」を装着することになる。

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自身も「得意」と語っていた岡山と比べると今回富士のレイアウトは大きく異なるが、予選でもポールポジション争いに加わってくることは確実。また決勝では岡山で激戦を演じた可夢偉も「全く隙がなかった」と言うほど完璧なパフォーマンスを披露。岡山でみせた速さと強さが富士でも再現されれば、間違いなく初のシリーズタイトルにつながる今季2勝目に大きく近づくだろう。

またチームとしても富士での相性は良く、僚友の国本雄資が2012年のJAFGPで優勝、昨年の第3戦でも3位表彰台を獲得している。石浦、国本ともにライバルからすると手強い存在になりそうだ。

【富士に強いチームインパル勢…オリベイラ、カルダレッリともにチャンスあり】
富士スピードウェイといえば、毎回優勝争いに絡んでくるのが星野一義氏率いるチームインパル。昨年もジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが第2戦Race1で優勝、Race2もロッテラーと一歩も譲らぬバトルを演じ2位を獲得。続く第3戦では2番手からトップを奪い独走。しかし終盤降り始めた雨に足元をすくわれスピン。惜しくも勝利は逃してしまったが、それに値する走りをみせた。

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インパルはSFに限らすSUPER GTでも富士を得意としており過去5年で2勝を挙げている。チーム共々、富士での相性の良さが今週末も間違いなく強力な武器になってくるだろう。

そして今季チームインパルに加入したカルダレッリは、昨年急遽参戦した第3戦で見事ポールポジションを獲得している。今年も一発の速さが決まれば上位を脅かす存在になることは間違いだろう。

【前回2位の小林可夢偉、今回の最大の敵は“コース”】
今年、スーパーフォーミュラで一番注目を集めている小林可夢偉。第2戦岡山では2位表彰台を獲得。早くもF1で培った実力を証明した。その流れで今週末の富士も上位進出の期待が高まっている。だが、シーズン開幕当初から彼が繰り返し口にしてきた「初めて走るコースとの戦い」が今回は一番の強敵になるかもしれない。

ここまでの鈴鹿と岡山は開幕前の合同テストで走り込んだコースだが、それ以外は富士を含めレースをするのは十数年ぶり、もしくは初めてになるのだ。ここ富士はリニューアル以降で走ったのは2013年のWEC。ただ決勝は悪天候で途中終了。また乗っていたマシンもLM GTEクラスのフェラーリ458。そのためフォーミュラカーでの本格走行は今回が初なのだ。

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WEC参戦時でレイアウトの詳細は把握しているだろうが、GTカーとフォーミュラカーでは攻略ポイントも若干は異なってくるはず。その点が不安材料であることは確かだが、逆に岡山の2位で勢いがついていることも事実。また昨年、一昨年ともに富士ではチームルマンがポールポジションを獲得しているなどチームとしても相性は決して悪くない。

第2戦からの勢いを活かすことができれば、富士での上位進出だけではなく優勝のチャンスも十分に有り得る。

【アウェイの富士で躍進なるか、山本尚貴、野尻智紀らHonda勢の巻き返しに注目】
毎年、富士スピードウェイでのレースはストレートスピードに定評があると言われているトヨタエンジン勢が有利というイメージが強いが、今年はその勢力図が変わる可能性がある。2年目を迎えた2.0リッター直列4気筒ターボエンジンの規定。昨年は序盤戦で苦戦が続いていたホンダエンジン勢が開幕戦から巻き返しを見せている。

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陣営の中で一番の注目は、やはり2013年王者の山本尚貴。今年は16号車の完成度が高く、一発勝負の予選ではどのコースへ行っても大本命と言える存在。おそらくここ富士でもミスやトラブルがなければトップ3圏内に入ってくるだろう。ただ彼が今一番の課題と言っているのが「スタートとレースペース」。だが、岡山では順位こそ落としたものの反応自体は悪くなかった。ここ富士でさらに磨きがかかればライバルに引けをとらないダッシュが期待できそう。レースペースという点では、昨年一番手応えがあったというのが富士戦。その時のデータと、それ以降で熟成された16号車のマシンが上手くマッチすれば、決勝でも他を圧倒する走りがみられそうだ。

今シーズン、ここまで惜しいレースが続いている山本だが、一番優勝できるチャンスが揃っている週末になりそうだ。

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そして、ホンダ勢で上位進出が期待されるのが成長著しい野尻智紀。昨年、一昨年とホンダのエースとして君臨してきた山本を脅かすほどの存在になりつつある。特に前回岡山では山本を破り予選2番手、決勝もホンダ最上位となる3位表彰台を獲得し山本に競り勝った。この勢いのまま週末を迎えれば、予選からポールポジション争いに絡んでくることは間違いなく、展開次第では自身2勝目も日曜日の決勝で観られそうだ。

この他にも、2戦連続で入賞を果たしている伊沢拓也(REAL RACING)や予選もQ3進出まであと一歩という走りをみせている塚越広大(REAL RACING)、小暮卓史(DRAGO CORSE)など、いつ上位に来てもおかしくないドライバーが集結。今年はエンジンパワーでの差はかなり縮まっており、富士だからといってエンジンメーカーによる有利・不利の差がない状態。完全に近いイコールコンディションで彼らがどのようなパフォーマンスを披露してくれるのか、楽しみだ。

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もちろん、週末は今回紹介したドライバー全てに優勝のチャンスがあると言っても過言ではない。つまり優勝候補は約10人以上。少なくとも、メルセデスの一騎当千となっている今年のF1と比べると遥かに見応えのあり、また手に汗握る大バトルが今週末繰り広げられようとしている。

この3連休は国内レースファンのみならず、普段はF1に注目しているレースファンにも是非注目して観戦していただきたい、そんな大激戦が期待できる1戦になりそうだ。

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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