【SF】“あのシーン、あのバトル”を一挙振り返り!2015シーズン総集編(3)

©MOBILITYLAND
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 今年も激闘が繰り広げられた全日本選手権スーパーフォーミュラ。その2015シーズンを複数回に分けて総集編という形で振り返っている。

 最終回の今回は、チャンピオンをかけた激闘が繰り広げられた最終戦鈴鹿、そして来年の展望も紹介する。

総集編(1)「第1戦鈴鹿〜第3戦富士」
総集編(2)「第4戦もてぎ〜第6戦SUGO」

【最終戦:鈴鹿サーキット“第14回JAF鈴鹿グランプリ”】

<石浦宏明、ついに初のシリーズチャンピオン獲得>
 いよいよ迎えた最終決戦。チャンピオン争いは石浦、一貴、ロッテラー、オリベイラの4人に絞り込まれた。最終戦は2レース制ということで1人最大18ポイントが獲得可能。それだけに2位一貴に対して6ポイントリードしている石浦にとっては決して楽観視出来る状況とは言えなかった。万が一、どちらかのレースでリタイア等があれば、他のドライバーにチャンスが回る可能性も十分ある。守りつつも攻めなければならないというプレッシャーの中、初のシリーズチャンピオンをかけた2レースが始まった。

©T.Yoshita/KANSENZYUKU
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 決勝日はあいにくの雨。実はフルウエットでの今季初。2番グリッドと好位置につけながらも、後方には小林可夢偉、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ、中嶋一貴などスタートが得意な面々が。いきなりプレッシャーのかかる状況に陥ってしまう。しかし、ここで石浦に味方する出来事が発生。雨脚が強く危険と判断したオフィシャルはセーフティカースタートにすることを決定。後続のドライバーにとっては順位を上げるチャンスがなくなった反面、石浦は2番手をキープすることができ好都合。5番グリッドの一貴は順位を上げることが出来ずレースは進んでいく。このままの順位で行けばRace1でチャンピオンが決定となるが、勝負というものはそう簡単にいかなかった。

 チェッカーまで残り数周に迫ったところで3位を走っていたジェームス・ロシターがコースオフしまさかのリタイア。これで一貴が4位に上がりチェッカーフラッグ。わずか0.5ポイント足りず石浦のチャンピオン決定は次に持ち越されることになった。続くRace2で8位以内に入れば自力チャンピオンが決まる石浦。ところが予選で獲得したポジションは良くなく、7番手からのスタート。だが、ここでも流れは石浦に傾く。スタート直前に5番グリッドの可夢偉のマシンにトラブルが発生。スタートディレイとなり最後尾へ。これで実質6番手に上がってスタート。すると、前を走る野尻、ロッテラーがトラブルで次々と脱落。労せずして4番手に浮上。チャンピオン決定に一歩ずつ歩み寄っていた。

 後半は雨も上がり、路面コンディションも微妙に変わっていく難しい状況だったが、石浦は全くミスをせず走行。最終レースで表彰台とはいかなかったが、見事シリーズチャンピオンを獲得するチェッカーフラッグを受けた。

©T.Yoshita/KANSENZYUKU
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 TDPドライバーとして、ジュニアフォーミュラ時代は一貴、可夢偉らと切磋琢磨。その後、順調にステップアップし2008年に国内トップフォーミュラへ。しかし勝利に恵まれず2011年いっぱいで一時はシートを失うことになってしまった。それでもSUPER GTやニュルブルクリンク24時間で実力をアピールし、昨年セルモ・インギング。立川祐路監督も「マシンがダラーラに変わるタイミングで、開発能力の高い石浦に乗ってほしいと、こちらからオファーした」と語るほど、チーム加入当初から期待も高かった。そして、今年の第2戦岡山で悲願の初優勝。そのまま勢いに乗ってランキング首位を快走。最終戦では並み居るチャンピオン経験者の追い上げにも全く動じず、見事“初めてのチャンピオン獲得“というプレッシャーに打ち勝った。

パルクフェルメで多くのフォトグラファーに囲まれた石浦。プレッシャーから解き放たれた様子で満面の笑みをみせた。

<最終戦でのもう一人のヒーロー、山本が開幕戦のリベンジを果たす>
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 石浦のチャンピオン獲得で湧き上がった最終戦。実はこのレースにはもう1人ヒーローがいた。Race2を勝利した山本尚貴だ。

 思い返せば、開幕戦でポールポジションを獲得するも、ファイナルラップでまさかのエンジンブロー。3位表彰台が一転しノーポイントに。ここから彼の2015シーズンの歯車が狂い始めた。第3戦富士では雨の予選で、まさかの最下位。昨年ポールポジションを獲得した第5戦オートポリスでもマシンが思うように仕上がらず予選Q2敗退と苦しい戦いとなってしまった。そこからチームとともに悩みながらマシンのセッティングを修正。その努力が実ってのRace2ポールポジションだった。

 そしてスタート。ダラーラのSF14でハンドクラッチに変わって以降、なかなかスタートは得意ではなかった山本。実は開幕戦でも出遅れてしまった。その時からスタートの改善に取り組み、第3戦以降は必ず順位を上げて1コーナーを通過していたのだ。

©HONDA ©HONDA
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 そしてウエット路面での今回。山本も良いスタートを切ったが、4番手の一貴が自慢のダッシュであっという間に隣へ。そのまま1コーナーに飛び込んでいく。逆転チャンピオンがかかる一貴は何としてもトップが必要。もちろん今季初優勝が欲しい山本も絶対に譲る訳にはいかない。最後の最後まで2人とも譲らず、接触寸前のサイド・バイ・サイドのまま1コーナーへ。ここは気迫で山本が勝りトップを死守。これまではウエットコンディションに苦戦していた16号車だったが、セッティングを変えたRace2では後続を引き離すマシンに。チームの頑張りを無駄にしまいと、山本は1周1周を必死に攻め、一貴との差を5秒以上に広げていった。

 しかし、残り2周。山本の脳裏には開幕戦の悪夢がよぎる。「レースはチェッカーを受けるまで何が起こるか分からない」。よく言われる言葉だが、その意味の重みを一番知っているのは、きっと山本なのかもしれない。しっかりとマシンを労りながらも後続を寄せ付けない走りを徹し、見事トップチェッカー。ホンダに待望の2016シーズンSF初勝利をもたらした。もちろん、サーキットには開幕戦を観戦したというファンも多く、普段は別のチーム・ドライバーを応援していたファンも、この時ばかりは山本に対して惜しみない拍手をおくった。

©T.Yoshita/KANSENZYUKU
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 ところが、パルクフェルメに帰ってきた山本は、マシンを降りるとガッツポーズはなく、チャンピオンを獲得した石浦のもとへ。「今日の一番の主役は石浦選手だから、彼を讃えるの再優先」と謙虚な対応もみせたが、間違いなく最終戦での“もう1人の主役”はだれでもない、この山本尚貴。2年ぶりの勝利を喜ぶ姿に多くの関係者、ファンが笑顔になっていた。

【ブリヂストン、43年間のタイヤ供給に幕…来季はヨコハマタイヤに】
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 最終戦も熱いバトルが繰り広げられたスーパーフォーミュラ。実は今年末がひとつの区切りとなるものがある。前身の全日本F3000や全日本F2選手権時代から国内トップフォーミュラの足元を支え続けてきたブリヂストンタイヤが、今季をもって同カテゴリーへのタイヤ供給を終了することになるのだ。

 Race2前には現場担当スタッフがポディウムに集められ、JRP白井社長から花束の贈呈。そして、週末来場したファンと、ドライバーや関係者から寄せられたメッセージ入りのフラッグが手渡された。最終戦の鈴鹿は2レースともウエットコンディションとなったが、最後までタイヤトラブルなくレースは終了。43年の歴史に、とりあえず一区切りをつけることになった。

©T.Yoshita/KANSENZYUKU
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 そして、来季新しくスーパーフォーミュラの足元を支えるオフィシャルタイヤサプライヤーとして横浜ゴムがパートナー契約を結んだ。実は彼らもフォーミュラから離れて約20年。「この機会を逃したら、フォーミュラのタイヤを知っているスタッフがいなくなってしまう。現場スタッフの強い希望もあって、引き受けることを決めた」と野地社長。将来的には「ソフト・ハード」といったマルチコンパウンドでの供給も視野に入れているようだが、少なくとも来季は信頼性と安全性を重視し1スペック供給になる見込み。それでも11月のテストでは早くも従来のポールポジションタイムに匹敵する速さをみせており、来季の開幕でどんなパフォーマンスが発揮されるのか楽しみだ。

【激戦の国内トップフォーミュラ…2016シーズンは注目ドライバーも参戦か?】
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 こうして激闘が繰り広げられた2015年のスーパーフォーミュラ。今年は可夢偉が参戦したこともあってか、ヨーロッパからの注目度も増している。11月末に鈴鹿サーキットで行われたメーカー&ルーキーテストにはGP2王者のストフェル・バンドーンをはじめ、GP2ドライバーが3人も参加。現役勢も含めると計9人の外国人ドライバーが参加した。

 一部の報道ではバンドーンの来季SF参戦が確実という情報も。これが本当に実現すれば来季はさらに激戦になることは間違いない。そして、今年はレギュラー参戦を機会がなかったロイック・デュバルも復帰を目指してテストに参加していた。来年のドライバーズラインナップは、近年の中では一番と言ってよいほど話題性のあるドライバーたちが出揃うことになりそうだ。

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 今年だけでもQ3進出圏のトップ8が0.3秒以内、全体リザルトをみても1.5秒以内にひしめくなど、些細なミスすら許されない世界トップクラスにシビアなカテゴリーに成長したスーパーフォーミュラ。果たして、来年はどんな激戦が繰り広げられ、どんなドラマが生まれるのか。これまでSFを観ていた人はもちろん、今年まではあまりSFを追いかけていなかったというファンの方々も、来年は絶対に目が離せないシーズンになりそうだ。

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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