【F1】第8戦ヨーロッパGP:レースレポート

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EUROPA F1 GRAND PRIX 2012
『Photo:Pirelli』

2012年F1世界選手権は、早くも中盤戦に突入。第8戦ヨーロッパGPの決勝がスペイン・バレンシアのバレンシア市街地コースで開催された。

ポールポジションは、予選Q3で他を圧倒する速さをみせつけたセバスチャン・ベッテル(レッドブル)。2番手に前回カナダGPで優勝したルイス・ハミルトン(マクラーレン)、3位に伏兵パストール・マルドナード(ウィリアムズ)と、今季のウィナーがトップ3を占めた。また、ここ数戦は僚友セルジオ・ペレスの活躍に影を潜めていた小林可夢偉(ザウバー)が7番手を獲得。久々のシングルグリッドから初の表彰台を目指して、グリッドについた。

【内容盛りだくさんの57周勝負、ヨーロッパGPがスタート
気温27℃、路面温度44℃でスタートした決勝レース。有利な奇数列から好スタートをみせたベッテルが2位ハミルトンを抑えて、トップで1コーナーを通過。5・6番手スタートのキミ・ライコネン(ロータス)とニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)が出遅れ、可夢偉が5位に浮上。その後すぐにマルドナードもかわし、1周目のメインストレートに4位で帰ってくる。

予選同様に早々と主導権を握ったベッテルは、いつもの“逃げ切り作戦”に移り、あっという間に後続を置き去りにする。一方、2位ハミルトンは思うようにペースを上げる事が出来ず、3位ロマン・グロージャン(ロータス)から6位ライコネンまでを抑え込んでしまう。この結果、5周終了時点では1位ベッテルと2位ハミルトンとの差は、7.6秒まで広がり「ベッテルの独走優勝」という流れになり始める。

【4位快走の小林可夢偉、今回は・・・】
この上位争いの中に加わってチャンスを伺う小林可夢偉。しかし、直線スピードが速いグロージャンのロータスE20を捉えることができず、1回目のタイヤ交換のタイミングがやってくる。

上位陣の中で動いたのは、ハミルトン。序盤からタイヤの消耗が進み、10周目にはグロージャンに抜かれ3位に後退。13周目に新しいタイヤを求めてピットイン、12位でコースに復帰する。この翌周に可夢偉、ライコネン、マルドナードが同時にピットイン。ここでザウバーチームが作業に手間取り、ここまで素晴らしい走りをみせていた可夢偉は、ライコネンに先行を許してしまう。

さらに後方11番手から徐々に順位を上げてきたアロンソが一気に追い上げ、15周目にタイヤ交換を終えると、なんとライコネン、可夢偉らの集団の前でコースに復帰。予選では0.004秒差でQ2敗退と母国で屈辱を味わった“スペインの英雄”が、ここで表彰台争いに名乗りを上げてきた。

序盤の4位走行から一転、またしても後手を踏む展開になりつつあった可夢偉に、さらなる悲劇が襲う。まだピットに入らずに粘っていたブルーノ・セナ(ウィリアムズ)と接触。これでフロントウイングを失った可夢偉は緊急ピットインを余儀なくされ、またしてもポイント圏外に大きく後退してしまう。接触後にハーフスピンを喫したセナは、可夢偉の進路を妨害した事が接触の原因という判断が下され、ドライブスルーペナルティを受ける。

序盤から常に接近戦の展開が続いている一方で、首位ベッテルは異次元のスピードで独走。2位グロージャンに対し25周終了時点で20.5秒という大量リードを築いていた。ここまで引き離されると、逆転がかなり困難なグロージャンだったが、初優勝を目指す若いフランス人は2周連続でファステストラップを更新するなど、コンマ数秒ながらベッテルに近付いていく。

EUROPA F1 GRAND PRIX 2012
『Photo:Pirelli』

【まさかの展開が続出!最終ラップまで二転三転した上位争い】
スタートから盛りだくさんの内容となったヨーロッパGPも、ちょうど半分を迎えた28周目、ジャン・エリック・ベルヌ(トロ・ロッソ)とヘイキ・コバライネン(ケータハム)がターン12で接触。これでコース上に散らばった破片回収のため、セーフティカーが導入される。ここまでベッテルが築き上げてきた20秒の貯金は一気にゼロになった。

このセーフティカーの間に、ベッテルをはじめ上位陣は2回目のタイヤ交換を済ませるが、ハミルトンはまたしても作業中にミスが出てしまい、大きくタイムロス。これでアロンソが3位に浮上する。

ベッテル、グロージャン、アロンソのトップ3で34周目に再スタートすると、すかさずアロンソが勝負をかける。首位ベッテル攻略に気をとられ、スタートダッシュが鈍ったグロージャンを抜き2位浮上を果たし、残るライバルはベッテルのみとなったアロンソ。しかし、ここで誰もが予想していなかった事態が起こる。

予選から決勝まで圧倒的な速さをみせていた現王者ベッテルだったが、オルタネーターのトラブルで突如失速。なんとリタイヤを余儀なくされた。それまで完璧なレース展開で今季2勝目は確実視されていただけに、マシンを降りたベッテルはグローブを投げつけ、珍しく怒りを前面にだした。

これでトップに立ったのはアロンソ。満員に埋め尽くされたスタンドでは、地元スペインのファンが総立ちになって沸きかえった。このまま今季2勝目、そして6年ぶりの母国優勝に向けて逃げ切りたが、ベッテルのリタイヤで初優勝のチャンスが大きくなった2位グロージャンが反撃、フェラーリマシンを積極的に追いかける。しかし、41周目にオルタネーターのトラブルでリタイヤ。初優勝は夢と消えてしまう。

これで2位に上がったのはハミルトン。しかし残り5周を切ったところでタイヤの消耗が激しくなり背後から迫っていたライコネンにオーバーテイクを許す。ペースダウンが止まらないハミルトンはマルドナードにも捕まる。残り2周となった12コーナーで横に並ばれる。表彰台がかかっている争いという事もあり両者一歩も譲らず接触。ハミルトンのマシンはコース脇のウォールに飛ばされリタイヤとなった。お互いに相手のスペースを十分に残さなかったことが原因だが、強引に割り込んだマルドナードに非があるとして、レース後20秒加算のペナルティが下った。

グロージャンのリタイヤ後、後続を引き離しながらトップを快走したアロンソ。今季2勝目、そして2006年スペインGP以来となる母国2勝目のトップチェッカーを受けた。
2位はライコネン、3位には終盤の混乱で一気に順位を上げたミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)が入り、2006年の中国GP以来、F1現役復帰後では初の表彰台となった。

レース中盤の接触で大きく後退した小林可夢偉(ザウバー)は、セーフティカー解除直後の34周目にフェリペ・マッサ(フェラーリ)と接触、マシンのダメージもありリタイヤとなった。このアクシデントの原因は可夢偉にあったとして、次回イギリスGPでは5グリッド降格のペナルティを受ける。

EUROPA F1 GRAND PRIX 2012
『Photo:Pirelli』

【スペインの英雄が復活!表彰台の中央で号泣】
母国で2度目となるトップチェッカーを受けたアロンソ。地元スペインのドライバーが6年ぶりに母国で優勝し、バレンシア市街地コースは大騒ぎとなった。コース脇のマーシャルからスペイン国旗を受け取ってウイニングランに入ったアロンソ。悲願を達成しコックピットの中ではすでに涙が溢れていた。ピットへ戻る途中でマシンを止めたアロンソは、自分のファンが待っているスタンドへ駆け寄り、喜びを爆発。その後の表彰式でスペイン国歌が流れると、表彰台の中央で感極まって号泣。そこには母国スペインに対する色々な想いが詰まっていた。

今季は開幕前から劣勢が予想されていたフェラーリチーム。実際にアロンソも苦労したレースは少なくなかった。彼が母国レースを制したのは2006年スペインGP。そのシーズンも含め2年連続でチャンピオンを獲得しスペインの英雄として、スペイン国民から愛されていたが、2007年以降はチャンピオン獲得からも遠ざかっており、母国レースでもなかなか活躍できないなど、苦しい日々が続いていた。
しかし、そんな彼を支えたのは母国勝利を信じるスペインのファンだった。“フェラーリレッド”一色に染まった満員のスタンド。そのファンの前で悲願を達成したアロンソの想いが詰まった涙だった。

これで8戦が終了した2012年のF1世界選手権。唯一シーズン2勝を挙げたアロンソが111ポイントに伸ばし、ベッテル、ハミルトンといったライバルが0ポイントに終わったこともあり、ドライバーズランキングでも20ポイントリードしてトップに浮上した。

次回は第9戦イギリスGPが7月6~8日、シルバーストーンサーキットで開催される。

『記事:吉田 知弘』

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吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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