【F1】2013オーストラリアGP:レースレポート

©Pirelli
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2013年のF1開幕戦オーストラリアGPの決勝が日本時間の15時00分からメルボルンのアルバートパーク・サーキットで行われた。大雨の影響で土曜日の公式予選が決勝日の朝に順延されるなど波乱の週末となった2013年開幕戦。決勝は分厚い雲に覆われたサーキットだったが、ドライコンディションでのスタートが切られた。

【予選ではレッドブルがフロントロー独占。果たしてスタートは?】
ポールポジションはセバスチャン・ベッテル、2番グリッドにマーク・ウェバーがつき、2012年王者のレッドブルチームがフロントロー(最前列)に並びスタート。ベッテルは無難なダッシュで1位をキープするがウェバーは出遅れ後方に沈んでしまう。その隙に4番手フェリペ・マッサ、5番手フェルナンド・アロンソのフェラーリ勢が好ダッシュで2・3位を奪い、今年最初のレースが始まっていく。ウエットコンディションでは影を潜めていたがドライコンディションでは他を圧倒する速さを持っているレッドブルRB9。ドライの決勝も序盤から逃げていく展開になるのではないかと思われた。しかし5周を過ぎても1位ベッテルの0.7秒背後に2位マッサと3位アロンソがぴったりマークする展開となった。

5周目に入ってくると早くもピットが慌ただしくなる。今年のピレリタイヤは全体的に柔らかいコンパウンドに変更され開幕戦オーストラリアGPでは初めてスーパーソフトタイヤが持ち込まれた。決勝では数周しか保たないと予想されていたため、各チームが早めに動き出したのだ。4周目のジェンソン・バトン(マクラーレン)を皮切りに続々とピットイン。7周目にベッテル、8周目にマッサ、9周目にアロンソと続々ピットへ。これで第2スティント以降はミディアムタイヤでの勝負となった。

これでトップに立ったのはメルセデスAMGに移籍したルイス・ハミルトン。同僚のニコ・ロズベルグも2位に続いた。彼らはスーパーソフトタイヤで少しでも周回を重ねて、2ストップ作戦を考えていたのだ。しかしロングランに向いていないスーパーソフトタイヤ。すぐに限界が訪れ13周目にハミルトン、14周目にロズベルグがピットインしミディアムタイヤに交換し戦列に復帰する。これにより、12番手スタートからミディアムタイヤで走り続けてきたエイドリアン・スーティル(フォースインディア)がトップに浮上。その背後にベッテル、3位マッサ、4位アロンソというオーダーに変わった。

【アロンソ、アンダーカットを成功させベッテルを逆転】
スーティルを除く上位陣のほとんどは3回ストップを選択していた。そのため20周を過ぎると2回目のタイヤ交換タイミングだったが、いち早く動いたのがアロンソだった。首位スーティルのペースが上がらず2位ベッテルが足止めを食っている間に、先に2回目のタイヤ交換を20周目に敢行。前後にマシンがいない場所でコースに復帰し、次にピットインするであろうベッテルの前に出るべくペースを上げた。一方のベッテルもすぐに対応し21周目にピットインするがアロンソに逆転を許す結果となってしまった。また同時にスーティルもピットイン。前を走る2ストップ作戦組のメルセデスAMG勢も射程圏内にとらえており、アロンソがレースの主導権を握ったかに思われた。

【ライコネンが第2スティントで25周の超ロングラン、実質的にアロンソを逆転】
この時点でトップに立ったのは、7番手スタートのキミ・ライコネン(ロータス)だった。ライコネンはスーパーソフトでスタートしアロンソと同じ9周目でミディアムに交換。そこから2ストップ作戦を実現させるためにタイヤを労りながら地道に周回。トップに立ってからも1分32秒〜33秒台と安定したペースで走行。アロンソはわずか11周で終えた第2スティントをライコネンは25周走破。超ロングラン作戦が見事的中し、一気に優勝候補に名乗りでた。

34周目にライコネンが最後となる2度目のストップを終えると、再びトップに立ったアロンソは、3回目のピットストップでかかるロスタイム分を稼ぐべく、1分30秒台のペースで必死に逃げる。ライコネンも22秒以上引き離されるとアロンソに逆転を許すため、タイヤを引き続き労りながらペースアップ。コース上では約15秒程度の差がついている両者だったが、10周、20周先に訪れるトップの座を目掛けて“目には見えない攻防戦”を繰り広げた。

【最後までプッシュし続けたライコネンとアロンソ、勝利を手にしたのは?】
結果的に十分なリードを広げることが出来なかったアロンソ。39周目に3度目のピットストップを行い、これでライコネンが前へ。43周目にはコース上でスーティルを追い抜き、再びトップの座に返り咲く。しかし、アロンソも41周目に1分29秒725、43周目に1分29秒649とファステストラップを記録。ライコネンとの差を4秒まで詰めていく。一方のライコネンも2ストップで消耗が気になるミディアムタイヤで1分30秒台を連発。必死に逃げるライコネンと、維持で追いかけていくアロンソ。2013年の開幕戦決勝は、終盤まで続いた両雄の攻防戦に注目が集まった。

一時は追いつくのではないかと思われたアロンソだったが、無理にプッシュし続けた事が裏目に出てタイヤを早めに痛めてしまう。これでペースが落ちてしまい万事休す。ライコネンは最後までペースを落とすことなく激走。56周目には1分29秒274とファステストラップを更新し、そのままチェッカー。通算20勝目、昨年F1に復帰してから2度目のトップチェッカーを受けた。

2位には一歩及ばなかったアロンソ。3位には王者ベッテルが入り、今年チャンピオン争いをしていくのではないかと言われている3人が揃って表彰台に登った。

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【笑顔のライコネン、今度こそシャンパン一気飲み!】
ウイニングランの間、チームとの無線交信で「みんなありがとう、この週末は素晴らしい仕事をしてくれた」と仲間に感謝の気持ちを伝えたライコネン。パルクフェルメでも、彼らしく冷静なガッツポーズで声援に応えた。

昨年のアブダビGPでは、現地の宗教の関係上、表彰式ではシャンパンではなくローズウォーターが用意されていたが、今回は正真正銘のシャンパン。トロフィーを受け取りシャンパンファイトが始まると真っ先に一気飲み。ほとんどチームクルーにかけることなく、2013年最初の“勝利の美酒”を味わった。

今年もF1は全19戦の過密スケジュール。次回は第2戦マレーシアGPが3月22〜24日の日程で開催される。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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