【SGT】2013第6戦富士:今季初Vを飾ったGSR初音ミクBMW「全員で取り返した勝利」

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 GT500クラス同様に熾烈な争いが続いているGT300クラス。第6戦富士ではセーフティカーが思わぬタイミングで出動し、大混乱の展開に。さらに雨も降るなど目まぐるしく変わるコンディションの中、GSR初音ミクBMW(谷口信輝/片岡龍也)が今季初優勝。昨年の第2戦富士以来となる約1年4ヶ月ぶりのトップチェッカーを受けた。ここ数戦はJAF-GT勢が絶好調で今回もARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志)がポールポジションを奪うなど、性能調整が入りながらも、流れは全くと言ってよいほど変わらなかった。今年は比較的苦戦が強いられているFIA-GT3勢の中でもストレートスピードでの伸びがよくないBMW Z4にとって富士スピードウェイは決して得意なコースとは言えなかった。それでも彼らが得意とする“柔軟な状況対応”が最終的に独占優勝に繋がるきっかけとなった。

【セーフティカー導入から生まれた“奇襲作戦”】
 5番手からスタートした初音ミクBMW。前半は片岡が担当し序盤から3位に浮上するなど上位でレースを進める。しかし今回富士では絶好調のS Road NDDP GT-R(星野一樹/佐々木大樹)、100kgものウェイトを積んでもスピードは衰えないMUGEN CR-Z GT(武藤英紀/中山友貴)がトップを展開。それに食らいつくものの、追い抜くまでには至らず我慢を強いられる状態が続いた。

 レースも3分の1に差し掛かった19周目、思わぬ形で初音ミクBMWにチャンスが舞い込む。GT500車両がクラッシュしたことによりコース上に破片が散乱。その回収のため21周目にセーフティカーが導入された。ちょうどドライバー交代ができる3分の1を迎えるタイミングということでGT500クラスはほとんどのマシンがピットイン。これに合わせてチームもドライバー交代することを決定。片岡をピットに呼び戻し谷口にバトンタッチする。SC先導中は隊列が整理されるため順位が一気に落ちてしまうが、ここでステイアウト(コース上に留まる)しなかったチームも後々必ずドライバー交代のためのピットが必要。SCでペースがコントロールされているので、それらのマシンのすぐ後ろについた状態(タイム差がほとんどない状態)でレースを再開できる。つまり(後に雨が降ってくるなどの要素を除いて)、このタイミングでピットに入るという選択が一番ベストだったのだ。24周目にレースが再開されるとトップのNDDP GT-R、2位の無限CR-Zなどコースに留まったチームが続々とピットイン。42周目にトップに浮上したのだ。

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 「トップ2台とは同じペースで走っていたのですが、300kmのレースは作戦面でも奇襲もできないし、難しいなと思っていました。でも、あのセーフティカーでチームがベストなタイミングでピット作業を行ってくれた。あの判断が全てでしたね。」と、その時の状況を振り返った片岡。これまでマシンのパフォーマンスで勝てない分、タイヤ無交換や給油量を出来る限り少なくするなど、コース上での走り以外の部分でタイムを稼ぎ、チームスタッフを含め毎回総力戦で臨んでくる初音ミクBMW。特に5月の富士500kmや前回の鈴鹿1000kmといった長距離戦では大きな効果がある戦略だが、今回のような300km戦では今やGT300クラスもスプリントレースのような展開になることがほとんどで、どうしてもコース上での速さが重要になってくる。しかし、セーフティカーという誰もが予期していなかった要素を瞬時に味方につけ、見事大逆転を果たした。

【前回鈴鹿から得られた手応えが終盤独走のきっかけに】
 他車のドライバー交代によるピットの関係で42周目にトップの座を手に入れた初音ミクBMW。途中から雨が降り始めるという難しいコンディションとなった後半スティントは谷口が担当。「レインタイヤに換えるほどではなかったけど、スリックで走り続けなければいけない状況で、僕にとっては頑張りどころでした」と語るように、雨の影響でペースが鈍るライバルを尻目にリードを広げる。残り10周にさしかかる頃には2位のPanasonic apr PRIUS GT(新田守男/嵯峨宏紀)に対し30秒以上ものリードを築いていた。シーズン序盤は上位に食い込む場面は何度もあったが、前述にもある通りスピード面でライバルを上回る事ができず苦しいレースが続いていた初音ミクBMW。しかし、前回鈴鹿で登場した“強力な助っ人”の影響がパフォーマンス向上に大きく影響しているという。

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 「この間の鈴鹿1000kmの時にヨルグ・ミューラーをはじめBMWのスタッフも何人か来て色々アドバイスをしてくれたお陰でマシンも少し良くなりました。でも他のクルマと比べると足りない部分はありますが、確実に前半戦よりクルマは良くなっているのを感じています。」

 8月に行われた鈴鹿サーキットでの第5戦ポッカサッポロ1000km。シーズン最も長い1戦を迎えるにあたり、チームはBMWワークスで活躍するヨルグ・ミューラーを助っ人として用意。それまでの苦戦が嘘だったかのような快進撃をみせ、見事2位フィニッシュを果たした。残念ながら、その後の車検不合格により失格となってしまったが、彼と共に来日したBMWモータースポーツのエンジニアやスタッフのアドバイスがきっかけとなり、今回富士でのトップ独走が実現したと言ってもいい。鈴鹿での失格はチーム・ドライバーにとっても、ファンにとっても非常に残念な結果になってしまったが、あのレースは決して全てが無駄だったわけではなかったのだ。

【鈴鹿での悔しさを乗り越え応援し続けた“仲間たち”】
 前回鈴鹿で2位表彰台からまさかの失格という、これほどにない悔しさを味わった初音ミクBMW。それでもチームは諦めずマシンを最高な状態で準備。見事、3週間後の富士でリベンジを果たした。しかし諦めていなかったのはチーム・ドライバーたちだけではなかった。「ファンと共に走るレーシングチーム」というコンセプトに、SGTに参戦するチームでは初めて“個人スポンサー制度”を導入。今年もすでに約1万人近い個人スポンサーが初音ミクBMWを応援。首都圏から近い富士スピードウェイには多くのサポーター、個人スポンサーが応援に駆けつけグランドスタンドを中心に熱心に応援を続けていた。彼ら彼女らにとっても、前回鈴鹿での失格は非常に悔しかっただろう。それでも「初音ミク号が再びかつ瞬間を見たい、一緒に喜びたい」という強い気持ちと個人スポンサーたちの熱い団結力が、間違いなく今回の快進撃に繋がったはずだ。

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 表彰式を終えて優勝チーム記者会見が行われている頃、富士スピードウェイには大粒の雨が降り始める。多くのファンは足早に帰宅を目指したが、4号車の個人スポンサーはお揃いのレインコートを着てピット裏に集まっていた。記者会見から帰ってくる谷口と片岡を待っていたのだ。2人が帰ってくると、あっという間に個人スポンサーたちに囲まれ、即席で優勝報告会がスタート。その表情は前回鈴鹿とは売って変わりドライバー、ファンともに満面の笑みをみせていた。もちろん、かつためにはチーム力やマシンのパフォーマンスが重要であるのは間違いないが、こういったファンも含めた団結力、チームワークというものも、勝利への原動力になっているのかもしれない。少なくとも初音ミクBMWには欠かせない存在になっていることは間違いない。

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 今シーズンの残すところ2戦のみ。次なる目標は2011年以来となるGT300クラスでのチャンピオン獲得だ。現在トップとの差は18ポイントと厳しい状態にはあるが、谷口は「残り2戦とも勝てれば、必ずチャンピオンの可能性も出てくる」と語り、片岡も「目標は残り2戦で連勝です。そうすればチャンピオンも見えてくると思います」と前向きな発言。その裏には、マシンを含めチームの雰囲気が確実に良くなっていることが伺える。

今回の勝利で、完全に息を吹き返した「名門痛車チーム」第7戦オートポリスの走りにも注目だ。

『記事:吉田 知弘』

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吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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