【SGT】2013最終戦もてぎ:GT500クラス プレビュー「8台による王座決戦の行方は?」

©T.Yoshita/KANSENZYUKU

 いよいよ今週末は2013年のSUPER GT最終戦もてぎ250kmレースが栃木県のツインリンクもてぎで開催される。今シーズンはGT500・GT300クラスともに最終戦までチャンピオン争いがもつれ込み、特にGT500クラスはエントリー台数の半分に当たる8台が獲得権利を有しているという史上最激戦の展開となった。

 例年どおり最終戦では獲得したポイントに応じて与えられてきたウェイトハンデがなくなり、全車ノーウェイトとイコールコンディションでのレース。間違いなく今年一番の白熱したバトルが繰り広げられているだろう。

 ただ、ファンの皆様としては「大混戦のGT500チャンピオン争いは、一体どこが一番有利なのか?」「自分たちが応援しているチーム・ドライバーがチャンピオンになれる確率は?」と気になっている人も多いだろう。そこで今回のプレビューでは、上位陣を中心に各チームの逆転チャンピオンへの条件や最終戦での見どころをまとめてみた。

【SGT】2013ポイントランキング(第7戦オートポリス終了時点)

【ランキング1位/58pts】
#38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
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 今年はポイントリーダーとして最終戦を迎えた名門チームのセルモ。シーズン前半は何度も優勝争いに加わるものの不運続きで0ポイントのレースが続いた。一時はチャンピオン争いからも脱落かと思われたが、今年もコンビを組む立川と平手は最後まで諦めず第6戦富士で今季初優勝。第7戦オートポリスでは終盤までトップを快走するもタイヤカスを拾うアクシデントでペースダウン。悔しい2位に終わった。それでも、後半戦で一気にポイントを稼ぎ、チャンピオンに最も近い位置につけている。

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 ここツインリンクもてぎでは昨年も優勝しており、先月の合同テストでもレクサス勢が好タイムをマーク。さらに直近2戦のレース内容を見ても“速さ・強さ”という点では頭一つ抜け出ている感がある。ただ前回のオートポリスでは勝てるはずだったレースを不運な形で落としてしまい、“流れ”という点ではベストではない。いくら過去2度のチャンピオンを経験しているエースの立川もチャンピオンが決まる最終戦というのはプレッシャーがかかるもの。また平手にとっては初のGT500チャンピオンがかかった大一番。同じようにプレッシャーを少なからず感じているはずだ。どんなに名門チームで常勝軍団であっても、タイトルがかかった最終戦だけは動きが固くなってしまい、何かがきっかけで急激なペースダウンや予期せぬアクシデントに巻き込まれてしまうこともよくある。もちろんチームも2人のドライバーも、その恐さを十分に理解していると思うが、それをきっちり克服してライバル達の前でチェッカーを受けられるかどうか?もてぎでも最後まで攻めきれれば悲願のチャンピオン獲得となるかもしれない。

【ランキング2位/54pts】
#36 PETRONAS TOM’S SC430(中嶋一貴/ジェームス・ロシター)
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 唯一、今シーズン2勝を挙げている一貴/ロシター組の36号車。特に前回のオートポリスでは10番手スタートから着実に順位を上げ、残り3周でトップ浮上という見事な逆転劇を演じた。これで一気に20ポイントを稼ぎトータル54ポイント。優勝すれば38号車セルモの順位に関わらず逆転チャンピオンを勝ち取ることが出来る。9月に行われたもてぎでの合同テストでも4番手と好タイムを記録しておりチームとしては2010年に勝利、また一貴は8月のスーパーフォーミュラ第4戦(もてぎ)で優勝を飾っているなど、相性の良いコース。さらに前回の大逆転劇で38号車とは対照的に勢いに乗っていることは確実。ポイント差も近いだけに、もしかすると一番チャンピオンに近い存在と言えるかもしれない。

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 ただ気になるのは予選順位。第2戦富士でポールポジションを獲得しているものの、それ以外はほとんど中団からのスタート。それゆえに混乱に巻き込まれて上位に食い込めないことが非常に多かった。前回オートポリスで上手く切り抜けて優勝できたが、その前の第6戦富士や序盤の岡山、セパンなどでは苦戦が強いられノーポイントに終わっている。きっちり予選から上位に食い込んで、早い段階からレースの主導権を握れるか?今年WECなど世界選手権でも活躍する一貴とロシターにとっては、腕の見せ所となる最終戦になりそうだ。

【ランキング3位/52pts】
#18 ウイダーモデューロHSV-010(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ)
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 今シーズン途中から急成長を遂げた山本/マコヴィッキィ組の18号車ウイダーモデューロ童夢レーシング。第5戦鈴鹿で初優勝を飾り、参戦4年目で手にした初勝利に山本が号泣するなど感動的なシーンもあった。こうして7戦を終えて52ポイントでランキング3位。最終戦の舞台ツインリンクもてぎは栃木県出身の山本にとっては地元コース。週末は間違いなく多くの山本ファンがサーキットに詰め掛けることは確実で、きっと彼らにとって大きな追い風になってくれるだろう。首位の38号車とは6ポイント差だが、もてぎで優勝し38号車が3位以下であれば逆転チャンピオンを決められるなど、可能性は決して低くはない。ただ、気になる点が幾つかある。

 まずは最終戦の舞台ツインリンクもてぎ。ご存知の通りホンダのホームコースであるのだが、コース特性は彼らが優勝した鈴鹿とは全く異なり直線と低速コーナーを結ぶ「ストップ&ゴータイプ」のサーキット。高速コーナーでも高い安定性を発揮しタイムを稼ぐのが売りのHSV-010にとっては、正直あまり向いていないのだ。さらに今シーズン彼らの足元を支え、初優勝時もパフォーマンス面で大きく貢献したミシュランタイヤは全体的な傾向として夏場は強いが、気温・路面温度が下がる春や秋では、他陣営と比べると劣勢になってしまう部分がある。実際に9月に行われたもてぎでの合同テストでも18号車はGT500クラス15台中11番手。またミシュランタイヤ勢も軒並みタイムが伸びなかった事が気になった。

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 しかし、マイナス要素ばかりではない。ここ数戦を観るとスピード面では最速ではないが、レース中に最低1度は必要になるピット作業で素晴らしい動きを発揮している。前回オートポリスでも迅速な作業で順位を上げてみせるなど普段は裏方でチームを支えているメカニックたちの努力が光っている。コース上でのスピード面ではライバルに劣っていても、それ以外の部分でタイムを稼ぐことによって勝利に繋がる可能性は十分あるし、特にピットでも1秒、2秒の違いがレース結果に大きく影響してくる。チーム一丸となって逆転チャンピオンを狙う18号車に注目だ。

【ランキング4位/52pts】
#17 KEIHIN HSV-010(塚越広大/金石年弘)
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 山本/マコヴィッキィ組の18号車と同様にトップから6ポイント差の52ポイントで逆転タイトルを狙う塚越/金石組の17号車ケーヒンHSV-010。中盤戦はトラブルなどで入賞できないレースもあったが第6戦富士で2位、第7戦オートポリスで3位と粘り強くポイントを集め、今シーズン未勝利ではあるものの逆転チャンピオンの可能性を残している。その条件は18号車同様に優勝して38号車が3位以下、もし2位になっても36・18・23号車が3位以下で38号車が4位以下であればチャンピオンが獲得できる。こちらも塚越が地元栃木県出身とあって何としても栄冠を勝ち取りたいところ。そのために“課題”となるのが予選の順位だろう。今シーズンは第4戦SUGOの4位が最高で、表彰式を獲得した後半戦はいずれも8番手と中団からのスタート。そうなると、どうしても金石が主に担当する前半スティントで混戦を掻き分けながら順位を上げ、後半の塚越でもトップを目指し追い上げていくという展開になり、最終的に優勝まで手が届かない。決勝でのレースペースが良いだけに後方からのスタートは非常に勿体無いという印象がある。今回のもてぎでは予選で上位に食い込むことが出来るか?これで彼らのチャンピオン獲得への可能性は大きく変動することになるかもしれない。

【ランキング5位/47pts】
#23 MOTUL AUTECH GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)/47pts
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 シリーズ史上初、同一コンビでの3連覇を狙う柳田/クインタレッリ組。今シーズン勝利こそないものの、2位1回、3位2回と着実にポイントを集めチャンピオン争いに踏みとどまってきた。しかし、前回オートポリスではピット作業違反のペナルティを撮られ無念の後退。これが大きく響きトップから11ポイント差の47ポイントで最終戦を迎える。逆転チャンピオンになるためには優勝して38号車が4位以下、36・18・17号車の3台とも3位以下という厳しい条件となってしまっている。ただ、ここツインリンクもてぎは彼らにとっては相性が良くコンビとしては2年連続で2位表彰台を獲得。23号車のNISMOチームとしては2011年に優勝を飾っている。可能性はライバルたちと比べると決して高くはないが、最終戦は波乱がよく起こり“まさか”というレース展開になりやすい。そんな時のために、きっちりトップでチェッカーを受けられるか?名門23号車NISMOの今年一番の走りに期待したい。

【ランキング6・7・8位】
#12 カルソニックIMPUL GT-R(松田次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)6位/46pts
#37 Keeper TOM’S SC430(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)7位/42pts
#39 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)8位/41pts
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最終戦でチャンピオン争いに絡んでいるのはランク6位の松田/オリベイラ組、7位の伊藤/カルダレッリ組、8位の脇阪/石浦組の3チーム。彼らは逆転チャンピオンを獲得するためには最低でも優勝が絶対条件(12号車のみ2位でも可)。それでも首位の38号車をはじめ上位陣は揃って脱落しないと可能性が潰えてしまう。しかし、前述でも触れたがチャンピオンがかかる最終戦は何が起こるか分からない。また彼らは逆に「まず勝たなければチャンピオンになれない」とレースでの目標が単純明快。3台とも今シーズンは随所で速さをみせているだけに、失うものがないくらいの勢いで臨めば、何かしらの突破口は必ず開けるだろう。意外と上位陣をかき回す「ダークホース」的な存在になるかもしれない。

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 今回、色々と各陣営の状況を分析し予想などをご紹介したが、最終的に誰が勝つかはレースが始まってみないと分からないというのが正直なところ。実際に昨年のGT300クラスでも一番チャンピオンへの可能性が低かったENDLESS TAISAN PORSCHE(峰尾恭輔/横溝直輝組)が大逆転を果たしたなど、混戦になればなるほど大逆転というケースもよくある。スタートからゴールまでの53周、一体どんなドラマが描かれるのか?ファンにとっては永久保存版と言えるような1戦が、いよいよ今週末に幕を開ける。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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