【SF】2014年第2戦富士:レース2で5位に食い込んだ山本尚貴「みんなの細かな意地の積み重なりで掴んだ結果」

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©T.Yoshita/KANSENZYUKU

 18日(日)に決勝レースが行われた全日本選手権スーパーフォーミュラの第2戦富士。レース1はジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL SF14)、レース2はアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TOM’S SF14)が優勝。特に午後に行われたレース2ではロッテラーとオリベイラによる緊迫したマッチレースに注目が集まったが、その後方で大きな存在感をみせつけ、レース2での“もう一人の主役”と言っても良い走りを見せたのが昨年度のチャンピオン山本尚貴(TEAM無限 SF14)だった。

 開幕戦鈴鹿では、チャンピオンでありながらも予選でQ2敗退、決勝もトラブルが影響し11位とポイント獲得ならず。思わぬ苦戦を強いられたが、その悪い流れをチームと共に断ち切って前に進もうとした週末を、今回も追いかけた。

【赤旗中断のQ2で光った限られたチャンスでの勝負強さ】
 まず存在感を見せつけたのは、17日(土)午後に行われた公式予選。無難にQ2へ進出した山本は開幕戦で果たせなかったホンダエンジン勢最上位とQ3進出を目指し、7分間のタイムアタック合戦に挑んだ。ところがアタック中に中嶋大祐(NAKAJIMA RACING SF14)がスピン。コース脇にマシンを止めたためセッションは赤旗中断となる。この時点で1分23秒574を記録していた山本だったが、ロッテラーをはじめ大半のドライバーが未計測。確実にQ3へ進むためにはもう一度タイムアタックを行い自己ベストを更新する必要があった。残り時間は2分50秒、すでに一度タイムアタックを終えているタイヤでの再トライということを考えるとチャンスはたった1周のみ。実は、これに酷似した条件が昨年もあった。

©T.Yoshita/KANSENZYUKU

 逆転チャンピオンをかけた2013年の最終戦鈴鹿。ポールポジションをかけた最終Q3でのタイムアタック中に今回と同じようにコースアウトした車両があったため赤旗中断。誰もが山本のポールポジション獲得は不可能だろうと思った。ただ、山本自身は全く諦めておらず“出来ることを全てやり尽くそう”と決めて無心にアタック。その結果、当時のコースレコードを更新する驚異的なタイムを刻みポールポジション。逆転チャンピオンにつながる1ポイントを獲得した。

 その勝負強さは、この富士でも存分に発揮される。ライバルがタイム更新に苦戦する中、ミスなく1周をまとめあげた山本は自己ベストを0.1秒更新する1分23秒396を記録。Q2トップのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(Lenovo TEAM IMPUL SF14)に0.3秒差と迫るタイムで見事Q3進出を果たした。

 この勢いで最終Q3も徹底的に各コーナーを攻め抜き7番手を獲得。苦戦が続くホンダエンジン勢では唯一Q3に進出し、トヨタエンジン勢の一角を崩す活躍。順位としては7位だったが少ないチャンスを確実にものにするところは“さすがチャンピオン”と言いたくなる予選だった。

【“これじゃレースにならない!”ライバルと争えないことに対する憤り】
 今回は2レース制が採用されている第2戦富士。午前中のレース1はQ1結果に基づき8番グリッドからのスタートとなった山本。昨日の予選で手応えを掴めたということもあってか、直前のグリッドではリラックスした様子。ただ、このレース1は彼にとって“悔しい”という言葉しか当てはまらないものとなってしまった。

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 スタート直後の1コーナーで中団の混乱で他車と接触。スピンを喫してしまい最後尾に転落。いきなり大きなハンデを背負ってしまう。しかし、昨年も一昨年も苦しいレースを何度も経験している山本は諦めずに猛追を開始。他車のリタイアにも助けられ中盤には12位まで挽回してきた。ところが残り6周で突然パワーがなくなるというトラブルに見舞われ緊急ピットイン。そのままマシンをガレージに戻し戦線を離脱。マシンを降りた山本は、思いっ切りグローブを叩きつけ怒りをぶちまけた。

 実はレースウィーク前の16日(金)に行われた専有走行でもトラブルが発生しエンジン交換を行っていた1号車。それ以外にも週末はホンダエンジン勢に共通したトラブルが多発し、正直まとも戦える状態ではなかったという。

 山本自身も今の状態できる最高の走りを探りながら毎ラップ走り、それに応えるべく毎晩遅くまでマシンの調整、セッティング等の試行錯誤を繰り返しスピード向上に努めてきたTEAM無限のエンジニア・メカニックたち。しかし、その努力をあざ笑うかのうように次々とトラブルが発生し、いつまで経ってもライバルとイコールコンディションでまともに走ることすらできない。開幕前からずっと抱えていた、どこにもぶつけることができなかった怒りが、ついに爆発した瞬間だった。

 「物に当たることは良くないことは分かっていたのですが、あまりにもフラストレーションが溜まりすぎて抑えることができなかったです。カッとなったのは一瞬で、すぐに午後のレース2に向けて気持ちを切り替えることができました。」

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[レース2直前にもトラブルが再発、直前までメカニックによる懸命な作業が続いた]

 無念のリタイアから、わずか3時間半後に行われたレース2。お昼休み返上でメカニックがトラブルを修復。またレース1では全体的にペースが良くなかったという課題もあったため、エンジニアと再度話し合いセッティングを見直した。ところがスタート前の8分間ウォームアップでまたしてもパワーダウンのトラブルが発生。その対応に追われたため、変更したセッティングの確認ができないままグリッドにつくことになった。

「もう、いい加減にしてくれ!」

 幸いメカニックによる必死の修復作業で再発は免れたが、またしてもイタズラのように起きるトラブルに振り回され、フラストレーションを抱えたままスタートを切ることになってしまった。おそらく数年前の彼であれば、これが引き金となってレースを上手く進めることができなかっただろう。しかし、そういった苦い経験を重ね、昨年ついにチャンピオンを手にした山本は負の連鎖で溜まった“怒り”を力に変え、レース2で素晴らしい激走をみせた。

【怒りを力に変え激走!後半はトップ集団に匹敵するペースで周回】
 今度はスタート直後の混乱に巻き込まれることなく7位で1周目を終えると、着実に前半スティントを周回。13周を終えたところで義務となっているタイヤ交換のためピットイン。TEAM無限のメカニックによる迅速な作業で再びコースに復帰する。

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 レース後半、前を走るのは5位のカーティケヤン。予選やレース1のペースを考えると追いつくのは難しいかと思われたが、予選から速さをみせていたセクター2・セクター3でタイムを稼ぎ、コーナー区間のブレーキングで距離を縮めていった。チャンピオンの追い上げから逃れようと焦ったのか、21周目のプリウスコーナーでコースオフ。地道にプレッシャーをかけ続けた山本をに軍配が上がった。

 その後も表彰台を目指しアクセル全開。激しいトップ争いを繰り広げたロッテラー、オリベイラと同じ1分25秒後半のペースで周回。スピード面で苦しんでいたホンダ勢で一人気を吐く走りをみせ、いつの間にかスタンドに詰めかけていたファンも、彼の激走に注目し始めていた。これ以上の順位アップは叶わなかったが、後半は力強い走りで5位入賞。2レース制のため通常の半分となる2ポイントを手にした。

【皆の細かな意地が積み重なって勝ち得たポジション】
 レース2を終え、パルクフェルメからピットレーンを歩いて帰ってくる途中、向かいのグランドスタンドで35周にわたって旗を振り続け応援していたファンが、温かく出迎えた。それに笑顔で手を振って応えた山本。内心は申し訳ない気持ちでいっぱいだったという。その後の取材で、今の思いを全て語った。

 「こうやってホンダが苦戦していて、良いパフォーマンスが見せれない中でも旗を振って最後まで応援してくれている人がいるというのは、本当にありがたいことです、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。こんなホンダでも応援してくれている人がいるというのは本当に心苦しい。だからこそ、1日も早く現状の良くして、勝つ姿を皆に見せたいです。」

©T.Yoshita/KANSENZYUKU
[レース後、パドックで待っていたファンと談笑する山本]

 「現場を含め開発を頑張ってくれている人がいるのは分かっています。ただ決して満足できるレベルではないし、もっともっとホンダに頑張ってもらわないと、とてもじゃないけど戦えない状態です。それと同時に僕たちも出来ること(マシンのセットアップやドライビングなど)は最大限やらないといけないと思っています。それに関しては、今週末チームはすごく頑張ってくれました。今週の5位は皆で勝ち得たポジション。自分のドライビングだけとかエンジンが良くなっただけではなく、チームのエンジニア・メカニック一人一人の“意地”が積み重なった結果のパフォーマンスだったと思っています。エンジンも良くなっていることは確かなのですが、ライバルと比べるとどうしても“差”を感じています。その現状を全体で認識して、事実を受け止めた上で改善に取り組んでいかないと良くならないと思います。それをしっかり受け止めて、今後の開発に拍車がかかれば幸いです。」

 今年はカーナンバー1をつけているだけでなく、今までホンダを引っ張ってきた伊沢拓也がいないということもあって、人一倍「ホンダのエース」としての責任を背負って、どんな状況でも陣営トップを守って戦い続けている山本。チャンピオンを獲得して以降も、着実に成長を遂げているのを感じた。そして7月12・13日に行われる第3戦は今回と同じ富士スピードウェイが舞台。予選・決勝ともに確実に存在感のあるパフォーマンスを引き出せていただけに、次回がより一層楽しみになった週末だった。

『記事:吉田 知弘』

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吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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