【2014ル・マン24h】大逆転につぐ大逆転!ロッテラー、トレルイエが乗る2号車アウディが優勝

©K.Sugawa
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 2014年のル・マン24時間耐久レースの決勝レースが、現地時間の14日から15日にかけて、ル・マンのサルトサーキットで行われ、No.2アウディR18 e−トロン クワトロ(M・ファスラー/A・ロッテラー/B・トレルイエ)が379周で優勝。このメンバーでの優勝は2011,2012年以来3度目、アウディ勢にとっては2010年から続く連勝記録を5に伸ばした。

 6番手からスタートした2号車はスタートドライバーを務めたロッテラーが序盤から追い上げ、すぐに2位へ浮上。その後、突然の豪雨に見舞われ、No.3アウディ(F・アルバカーキ/M・ボナノミ/O/ジャービス)とNo.8トヨタTS040 Hybrid(A・デビッドソン/N・ラピエール/S・ブエミ)がユノディエールでクラッシュ。8号車はなんとか自走でピットに戻ってきたが、マシン修復に45分かかり総合49位まで転落。一方の3号車はリア部分を大きく損傷しリタイアを余儀なくされた。

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 その後は、豪雨が嘘だったかのように晴れ渡り夕暮れからナイトセッションへ突入。2号車アウディは先行するNo.7トヨタTS040 Hybrid(A・ブルツ/S・サラザン/中嶋一貴)の2分後方を走行。そこから約5時間近くに渡って2分前後のギャップで推移する緊迫した攻防戦が繰り広げられた。少しずつ2号車に迫られていた7号車トヨタは13時間を過ぎたところでエースの中嶋一貴を投入。少しでも差を広げて夜明けを迎えようとたが、ここで毎年現れる“ル・マンの魔物”が目を覚ます。14時間を目前にした220周目に、7号車が突然ストップ。電気系のトラブルに見舞われてしまった。残念ながらその場での修復は不可能で、自走でも戻ってくることができないため、ここまでトップを守ってきた7号車は無念のリタイアを余儀なくされた。

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 これでトップは2号車。後続には1周以上の差をつけて夜明けを迎えるが、今度は2号車にも悲劇が襲う。現地時間の午前7時00分を迎えようとしたところでピットインすると、そのままガレージに戻されドラブルの修復作業が行われる。原因はターボ関係のようで、コースに戻るまで20分以上かかってしまった。これで3位に後退し、トップはNo.1アウディR18 e-トロン クワトロ(L・ディグラッシ/M・ジェネ/T・クリステンセン)に。11日のフリー走行でマシンが原型を留めないくらいの大クラッシュに見舞われたが、メカニックの懸命な作業で翌日のセッションには復活。決して本調子の状態ではないがクラッシュによりドクターストップでレースに出られないロイック・デュバルのためにも、着実に周回を重ねた。

しかし、伝統の一戦はこれくらいで勝てるほど甘くはない。ル・マンの森に棲む魔物は、次に1号車アウディをターゲットにする。残り4時間を切ったところで1号車にもトラブルが発生。ガレージ内で作業が続けられる。これでトップが再度交替し、No.20ポルシェ919Hybrid(T・ベルンハルト/M・ウェバー/B・ハートレー)。2位に2号車アウディがつけ、1号車は4周遅れの4位に後退。

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 レースではライバル勢に遅れをとっていたポルシェだったが、終盤に優勝のチャンスが舞い込んできた。しかし同一周回を走る2号車はエースのロッテラーが猛烈な勢いで追い上げを開始。残り2時間30分のところで30秒差まで接近した。このプレッシャーに、ポルシェ勢は急きょ作戦変更を決断。本来は予定していなかったウェバーを緊急でスタンバイさせ、直後のピット作業時にドライバー交替。陣営が誇るエースに、優勝の望みを託した。

 ウェバーも気合満々でピットアウト。その間に先行した2号車アウディを追いかけた。ところが、残り2時間で、まさかまさかのトラブルが発生。スロー走行でピットインすると、メカニックの修復作業も実らずリタイアが決定。最後の最後でル・マンの魔物につかまってしまった。

 これで3大メーカーによる激しい攻防戦の決着がつき、2号車がトップ、1号車が2位に上がり、結局アウディがワン・ツー体制を築き上げた。

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 残り1時間30分のところで2号車はアンカーのトレルイエに交替。1号車を駆るクリステンセンとランデブー走行をし、現地時間の15日15時を過ぎたところでチェッカーを受けた。なお3位には序盤のクラッシュ以降、粘り強く走り続けていた8号車トヨタが入った。

 この他の日本勢は、井原慶子が乗り込んだ50号車ラルブル・コンペティションは総合15位(LMP2クラス9位)、LMGTE-Amクラスに参戦したチーム・タイサンの70号車フェラーリ458は総合29位(クラス8位)で完走。急きょ70号車のドライバーに抜擢された中野信治は、リタイアに終わった昨年のリベンジを果たした。そして、特別枠“ガレージ56”で参戦した日産ZEOD RC。決勝前のフリー走行では1周を電動パワーのみで走るなど、様々な記録を樹立したが、スタート直後5周でマシントラブルによりリタイアを余儀なくされた。

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 今年はアウディ、トヨタの頂上決戦にポルシェも加わった3強での優勝争いとなったル・マン24時間決勝は、例年になく展開が目まぐるしく変わり、時には手に汗握る攻防あり、時には嬉し涙、悔し涙を流す瞬間ありと、様々なドラマがあった。来年は、ここに日産がワークス・チームを作って参戦することがすでに決定しており、このまま行けば”4強争い”が実現。まだレースが終わった直後ではあるが、今から来年のレースが楽しみである。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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