【F1】第16戦 韓国GP:レースレポート

『Photo:Pirelli』
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2012年のF1世界選手権も残り5戦。小林可夢偉(ザウバー)の3位表彰台で湧いた日本GPからの連戦で、第16戦韓国GPの決勝レースが14日(日)、ヨンアムにある韓国インターナショナルサーキットで行われた。

ポールポジションはマーク・ウェバー。2番手にセバスチャン・ベッテルがつけ、前回の日本GPから本来の速さを取り戻し、韓国でも予選から他を圧倒。現在ポイントランキングで首位に立つフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)は4番手。今回もQ3進出が期待された可夢偉はだったが、またしてもアタック中に発生した黄旗区間に邪魔される形となり、13番手からスタートを切った。

スタートでは好ダッシュを決めたベッテルが1コーナーでウェバーのインを突きトップ浮上。序盤のロングストレートで横に並びかけられるが落ち着いてブロックしトップを死守。アロンソは3コーナーまでもつれたポジション争いを制し3位に浮上。ベッテル、ウェバー、アロンソの順でレースが進んでいった。

一方、可夢偉のいる中団グループは、狭い韓国の1,2コーナーから混乱が見られ、3コーナー手前で行き場を失いニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)、ジェンソン・バトン(マクラーレン)に相次いで接触。2人は不本意な形で早々に韓国GPを終える。可夢偉もフロントウイングを破損、左リアタイヤのパンクとマシンにダメージを負い1周目から緊急ピットイン。その後、この一連の接触事故の原因を作ったとしてドライブスルーペナルティを受け、周回遅れになってしまう。結局、接触時のマシンへのダメージが大きく17周目にリタイヤ。来季のシート獲得に向けてさらなる結果が欲しかった1戦で残念な結果に終わってしまった。

スタートでトップに立ったベッテルは、序盤からファステストラップを連発。徐々に後続を引き離し、いつもの独走劇を披露していく。今回用意されたドライタイヤのうち、柔らかい方のスーパーソフト(赤)でスタートしたベッテルは、15周目にソフト、35周目にもソフトと2回のタイヤ交換を行い、後続に10秒ものリードを保って最終スティントに突入していく。

『Photo:Pirelli』 『Photo:Pirelli』
『Photo:Pirelli』

このまま行けばベッテルの優勝とランキング首位が入れ替わることが確実な3位アロンソ。まずは2位ウェバーの攻略にかかるが、相手もアロンソの動き先手先手で封じる作戦を展開。2回目のタイヤ交換でも逆転することが出来ず、逆に日本GPから復調の兆しがある僚友フェリペ・マッサに追われるという、苦しいレース展開を強いられてしまう。それでも“今後のチャンピオン争い”のために1ポイントでも多く稼ごうと、終盤はウェバーを追い詰めにかかるが、結局逆転には至らず3位でチェッカーを受けた。

終盤に入っても全く危なげない展開を見せていたベッテル。残り10周を切るとタイヤの消耗による急激なペースダウンやタイヤのトラブルを心配したチームが、「タイヤを労るように」という指示が出すものの、タイヤ以外の“何か”あった時のために後続との貯金をしっかり築いておこうベッテルはアクセルを緩めなかった。最終的に2位ウェバーに8.9秒の差をつけてフィニッシュ。ウェバーもそのまま2位に入り、レッドブルチームが今季初のワン・ツー・フィニッシュを飾った。

『Photo:Pirelli』
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第14戦シンガポールGPから続くアジアラウンド3連戦を飾り、トータル215ポイントに伸ばしたベッテルは第5 戦スペインGP以来、約5ヶ月ぶりにランキング首位の座をアロンソから奪い返した。

過去7度のチャンピオンを獲得したミハエル・シューマッハ以来となる3年連続チャンピオンに大きく近づいたベッテルは「これから、きっとタフな争いになるだろう。チャンピオン争いというのは、たった一つの出来事でランキングに大きく影響するし、これから何が起こるか分からない。残り4レース、とにかく我々が出来るベストなレースを1つずつやっていくのみだ」とコメント。

2012年のチャンピオン争いは、このアジア3連戦で一気にベッテルへと流れが傾いた。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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