2013年のF1は秋のアジアラウンドに舞台を移し、第13戦シンガポールGPの決勝レースが現地時間の22日、市街地コースのマリーナ・ベイ・ストリートサーキットで行われた。
今年で開催6回目となるナイトレースのシンガポールGP。すっかりモナコGPと並び世界中から注目を集めるレースイベントに成長し、グリッドにはサッカーのデビッド・ベッカムなど各国セレブも多数来場。華やかな雰囲気の中で決勝レースが始まった。
フロントローはポールポジションのセバスチャン・ベッテル(レッドブル)と2番手のニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)という顔ぶれ。スタートではロズベルグが意地をみせターン1で前に出るが、勢い余ってワイドラインになり、ターン3でベッテルが再びトップを奪い返す。後方では7番手スタートのフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が抜群のダッシュを見せ一気に3位に浮上した。
今回も1周目をトップで帰ってきたベッテルは、いつも通りの独走モードへ。2周目にはライバルより3秒近く速い1分52秒866をマーク。あっという間に6秒〜7秒のリードを築いてしまう。その後も着実にリードを広げていき、17周目に1回目のタイヤ交換を行うと後続との差は10秒に達しようとしていた。このままベッテルが独走で優勝かと思われたが、毎年波乱が起こるシンガポールGPは、このまま終わらなかった。
レースも中盤に差し掛かった24周目、16位を走っていたダニエル・リチャルド(トロ・ロッソ)がターン18でクラッシュ。マシン回収のためセーフティカーが導入される。ここで各チームの戦略が大きく別れた。このタイミングを利用しフェラーリ、ロータス、マクラーレンの3チーム6台が2回目のタイヤ交換を済ませ戦列に復帰。一方レッドブルとメルセデスAMGの2チーム4台はレースも半分を消化していないという点からコース上に留まることを選択した。これによりベッテル、ロズベルグ、マーク・ウェバー(レッドブル)、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)、アロンソというオーダーになる。
マシン回収とコース清掃が終わり31周目にレースが再開されると、ベッテルは再びプッシュを開始。ここまでのSCランで、すでに2回目のピットストップを済ませているアロンソやジェンソン・バトン(マクラーレン)キミ・ライコネン(ロータス)らがすぐ後ろにいる状態で、自らが2回目のピットストップを行うまでに、そのロスタイム(約23秒)を稼ぐ必要があったのだ。すでにミディアムタイヤに交換してから15周近く経っていたため、その時間は限られていたが、今週末絶好調の現王者は1分50秒台のタイムを連発。あっという間に後続に対して23秒のギャップを作った。一方2位のロズベルグ以下、ステイアウト(コースに留まること)を選択した3人が苦戦し、ペースを上げられないままピットイン。結果アロンソらの逆転を許し優勝争いから脱落してしまう。
ベッテルはライバル全員がピットインしたのを確認すると、44周目にピットへ。ここでレッドブルのメカニックが用意したのは新品のスーパーソフトタイヤだった。実は前日の予選Q3でほぼ全員が2回タイムアタックを行ったのに対し、ベッテルは1回のみで終了。そこで余った新品のタイヤを最終スティントに持ち込んだのだ。ここまで築いた貯金のおかげでトップのままでコースに復帰すると、46周目にいきなり1分48秒874のファステストラップを叩き出し、三度後続を突き放した。これには2位アロンソも何も出来ず順位をキープするのが精一杯。結局、ラスト18周の最終スティントで32秒もの大差をつけてベッテルが今季7度目のトップチェッカーを受けた。2位にはアロンソがそのまま入り、チャンピオン争いでも肉薄。そして終盤になって3位争いが白熱。後半はバトンが3位を死守しており、今季初表彰台も間近に見えていたが、終盤になってライコネンら後続の集団に逆転を許してしまう。今週末は背中の痛みに悩まされ本調子ではなかったライコネンが3位に入り、ハンガリーGP以来となる表彰台を手に入れた。
この結果によりトータル247ポイントに伸ばしたベッテルは、アロンソとの差を60ポイントに広げ、4年連続チャンピオンにまた一歩前進した。
『記事:吉田 知弘』
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