【2013ル・マン24H】プレビュー(1):アウディvsトヨタの2強争いか?注目のLMP1クラス

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いよいよ6月22日に決勝レースのスタートが切られる第81回ル・マン24時間耐久レース。今年も週末に向けて地元市内の広場で公開車検が行われ、エントリーしたチーム・ドライバーが続々と集合し盛り上がりをみせている。

今年も世界耐久選手権(WEC)のシリーズ第3戦として開催されるル・マン24時間。昨年同様に総合優勝争いをするトップカテゴリー「LMP1クラス」には王者アウディ勢が3台体制でエントリー。それに対抗するトヨタもTS030 HYBRIDを2台投入。ドイツと日本を代表するメーカーによる頂上決戦が今年も目玉になりそうだ。

【直前テストも絶好調。今年はアウディvsアウディの頂上決戦か?】
昨年、ハイブリッドシステムを搭載した新型マシン「R18 e-トロン クワトロ」を2台投入し、合計4台体制でエントリーしたアウディ。ライバル陣営にトラブルやアクシデントが相次ぐ中、彼らは着実に周回を重ねトップ4を独占する圧倒的な強さを見せつけた。今年は全車R18 e-トロン クワトロの3台体制(1号車:アンドレ・ロッテラー/マルセル・ファスラー/ブノワ・トレルイエ組、2号車:トム・クリステンセン/ロイック・デュバル/アラン・マクニッシュ組、3号車:マルク・ジェネ/ルーカス・ディグラッシ/オリバー・ジャービス組)で、陣営として4連覇に挑む。

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特に1号車のロッテラー/ファスラー/トレルイエ組は2011・2012年と連覇を果たしており、過去に1度しか成し遂げられていない同一トリオでの総合3連覇をかけたレースになる。先日行われたル・マンでの公式合同テストでも好タイムを記録。また昨年同様にレース中のアクシデントにもチームが迅速な修復作業が行える完璧なバックアップ体制が整えば、トヨタなどの陣営にもアドバンテージを得ることが出来る。このままだと3連覇の偉業達成も容易くやってのけそうな勢いだが、今年はそれに立ちはだかる最大のライバル“チームメイト”がいる。

今年は3台体制のうちエースの1号車に匹敵する速さをみせているのがクリステンセン/デュバル/マクニッシュ組の2号車。ドライバーズラインナップを見せても皆経験豊富でクリステンセンは過去最多8度の優勝記録を持ち、マクニッシュも総合優勝の経験がある。過酷な24時間の戦いを誰よりも知る2人に加え、フォーミュラ・ニッポン(現Sフォーミュラ)、SUPER GTなど日本国内のカテゴリーでチャンピオン経験があり、今年も日本で活躍中のロイック・デュバルも速さでは定評があるドライバー。このトリオで挑んだWEC開幕戦シルバーストンでは1号車を終盤で逆転し優勝を勝ち取り、第2戦スパでも中盤まで接戦を繰り広げ2位フィニッシュを果たしている。迎える第3戦ル・マンでは、どんな争いを我々にみせてくれるのか?今から楽しみなところだ。

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また、1号車のロッテラーと2号車のデュバルは前述でも触れたとおり、今年も国内最高峰のスーパーフォーミュラに参戦中。WECの忙しいスケジュールの合間に出場したシリーズ第2戦(オートポリス)では序盤からリードしたデュバルをロッテラーが気迫の走りで逆転し優勝。直接対決という点では連敗中のデュバルにとっては、今回ばかりは負けられない1戦になるだろう。王者アウディ陣営同士のハイレベルなトップ争いから目が離せない。

【最強軍団に挑むトヨタ勢。逆転に必要な要素は?】
最強軍団アウディ陣営に今年も挑むトヨタ・レーシング。昨年投入したTS030 HYBRIDをアップデートさせ、今年はWECにもシーズンを通して2台体制でエントリーしている。しかし、開幕戦シルバーストンでポールポジションを獲得したものの、その後は王者に対し手も足も出ないほど完敗を喫している。直前に行われたテストでも大きく差をつけられてしまい、レース前から「アウディ有利」の雰囲気が漂い始めている。このままでは優勝はおろか表彰台も危ういトヨタ勢。もちろん、逆転のチャンスがない訳ではない。

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昨年はレース序盤からアウディ勢と激しいデットヒートを繰り広げたトヨタ勢。ただ終わってみればアウディがトップ4を独占されるという悔しい結果だった。その勝敗を分けたポイントが「アクシデントへの対応力」だった。今年も4クラス混走で行われるル・マン24時間。その中でスピード差の異なる他クラスのマシンをいかにロスなく安全に抜いていくかが、最終的に大きな差となって現れてくる。昨年のトヨタは、2台とも他クラスのマシンと接触したことが原因でリタイアに追い込まれてしまった。一方のアウディは4台全てがそのような接触はほとんどなく、万が一コースオフしてマシンにダメージを負っても、確実にピットに辿り着き、そして短時間で修復できるマシン作り・チーム作りを重点的に行なっていたため、最終的にガレージに何十分もこもる光景は見られなかった。

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ル・マンで優勝するには、1周1周のラップタイムやピットでの給油時間を少なくするための燃費管理も重要だが、やはり「アクシデントやトラブル」が勝敗を分ける一番大きなポイントになってくる。たとえ最強だと言われているアウディ勢にとっても、レースが始まると何が起こるかは分からないし、今年は予想外の大きなトラブルに見舞われる可能性だってある。その時にトヨタはいかにノーミス、ノートラブルで走れているかが逆転の大きな鍵になってくるだろう。それに昨年の序盤戦で見せた速さが加われば、陣営として初のル・マン制覇の瞬間も確実に見えてくる。

いよいよ現地時間の19日に走行が始まるル・マン24時間耐久レース。今年はどのチームが栄冠を手にするのか?レースファンにとっては、今年も眠れない夜が間近に迫ってきた。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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