【F1】第11戦ハンガリーGP:レースレポート

HUNGARIAN GRAND PRIX F1/2012
『Photo:Pirelli』

2012年のF1世界選手権は、シーズン前半の締めくくりとなる第11戦ハンガリーGPが首都ブダペスト郊外のハンガロリンクで開催され、7月29日に決勝レースが行われた。

ここ数戦は中高速コースが続き、現在ランキング首位のフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)の活躍が目立ったが、今回の舞台はモナコに次いで低速コースと言われているハンガロリンク。今までとは異なるキャラクターのサーキットでポールポジションを獲得したのはルイス・ハミルトン(マクラーレン)。ロマン・グロージャン(ロータス)が2番手につけた。

気温30℃、路面温度46℃という真夏のコンディション。本来は70周で争われる予定だったが、フォーメーションラップが終わってグリッドに各マシンがついた際、17番手のミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)にトラブルが発生しスタートできないという意思表示を表した。これによりフォーメーションラップからやり直しとなり、1周減算の69周で決勝レースのスタートが切られた。
トップを死守したハミルトンに、初優勝を目指すグロージャンが2秒差の間隔を保ちながら追撃した。レース序盤は、フロントロー2人による一騎打ちの争い。

一方、前回ドイツGPで自己最高の4位入賞を果たした小林可夢偉(ザウバー)。予選ではQ3進出ならず15番手からのスタート。前回同様に上位進出が期待されたが序盤からペースが上がらず苦戦を強いられてしまう。

今回、ピレリタイヤは各チームにソフト・ミディアムの2種類のドライタイヤを用意。トップのハミルトンは18周目に1回目のタイヤ交換を行い、ソフトからミディアムへ。追いかけるグロージャンは19周目に入ってソフト→ソフトと異なる戦略に出る。翌20周目にはチームメイトのキミ・ライコネン(ロータス)もタイヤ交換を済ませ、同じソフト→ソフトで第2スティントへ入っていく。

『Photo:LotusF1Team』
『Photo:LotusF1Team』

レース中盤もハミルトンが逃げ、グロージャンが追いかける状態が続いたが、2回目のタイヤ交換もグロージャン39周目、ハミルトン40周目に大きなミスなく済ませる。ここでトップにたったのがライコネン。1回目と同じように2回目のタイヤ交換をすぐ行うかと思いきや自己ベストタイムを連発し、45周目までソフトタイヤで周回を重ねた。このプッシュが功を奏し、2回目のタイヤ交換を終えてコースに戻ろうと、グロージャンをタッチの差で逆転し2位にジャンプアップ。すかさずトップのハミルトン攻略に向けて差を詰め始めた。

序盤からグロージャンを完全に封じ込め、ハミルトン有利で進んできたハンガリーGP決勝。最後はハミルトンvsライコネンの元F1王者対決でサーキットは盛り上がった。
残り20周を切ったところで二人の差は1秒を切り、DRS稼働圏内まで追い詰めたライコネン。そのペースは明らかにハミルトンを上回っており、いつ順位が入れ替わってもおかしくない状況だった。

しかし、トップ快走時のレースコントロールに定評のあったハミルトン。追い抜きポイントが少ないハンガロリンクの特徴を考え、唯一チャンスが生まれやすい1コーナーで攻め込んでくると読んでいた。今回は直前のメインストレートが今回のDRS稼働区間になっていたため、そこで前のマシンとの間合いを詰めて鋭角状の1コーナーで仕掛けるという展開を避けるため、ハミルトンはDRSの稼働判定が行われる最終コーナーで相手との差を広げるような走りを徹底した。

HUNGARIAN GRAND PRIX F1/2012
『Photo:Pirelli』

最終コーナーを乗り切れば1コーナーで攻め込まれる可能性が低くなり、1コーナーを守れれば自らがミスをしない限り抜かれるリスクも減る。これで最後の最後までライコネンに隙を与えなかったハミルトンが今季2勝目のトップチェッカーを受けた。

2位ライコネンは今季5度目のポディウムとなったが、表彰台では悔しそうな表情を見せていた。3位にはグロージャンが入り、ロータスチーム全体で速さが光ったレースだった。

ランキング首位のアロンソは5位フィニッシュ。トータル164ポイントに伸ばし、2位マーク・ウェバー(レッドブル)との差を40ポイントに広げた。珍しく優勝争いに絡めないレースだったが、着実に3度目のワールドチャンピオンへ近づくレースとなった。

今回、苦戦が強いられた可夢偉。終盤は15位で粘りの走りを続けていたものの、残り2周というところでハイドロリックのトラブルに見舞われ無念のガレージイン。18位感想扱いとなった。

大混戦の状態で開幕した2012年のF1世界選手権は早くも前半戦が終了。ここで約1ヶ月の夏休みを挟み、次回は8月31日〜9月2日の日程で第12戦ベルギーGPが開催される。

F1ファンにとっては「例年以上に待ち遠しい夏休み」になるかもしれないが、しばしの間、お待ちいただきたい。

『記事:吉田 知弘』

吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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