【F1】2013第5戦スペインGP〜Point of the Race〜:母国GPでアロンソが魅せた“集中力”

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©Pirelli
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F1第5戦スペインGPは、母国の英雄であるフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が今季2勝目を飾り、2012年のヨーロッパGP(スペイン・バレンシア市街地コースで開催)以来となる母国優勝を成し遂げた。今回の舞台カタルーニャ・サーキットは追い抜きポイントも少なく、予選でフロントロー(最前列)を獲得したドライバーが絶対的に有利と言われているなか、5番手スタートと不利なポジションから追い上げることになったアロンソ。さらに好調メルセデスAMGのニコ・ロズベルグ、ルイス・ハミルトンに加え、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)、キミ・ライコネン(ロータス)と今季優勝している強敵も揃う中、トップ奪還は決して容易なものではなかった。

【タイヤの消耗が激しいカタルーニャ、4ストップ作戦で対応】
今回、ピレリタイヤが持ち込んだドライタイヤは一番硬いミディアム(白)とハード(オレンジ)の組み合わせ。しかし今年の傾向からするとレース序盤でのタイヤの消耗は予想以上で各レース平均3回のピットストップを行うチームがほとんどだった。

今回は気温20℃、路面温度38℃というコンディションも考慮し、フェラーリ陣営は4ストップ作戦を選択。ライバル達が3ストップを選んでいれば、彼らより1回分(約19〜20秒)多くロスタイムが発生する。その反面、各スティントの平均周回数は短く済むため、タイヤの消耗を気にせず常にハイペースで攻められる。つまり、アロンソはタイヤの温存を比較的気にする必要がないことを上手く利用し、自身4回目のピットストップまでにコース上で20秒以上のリードを築く必要があった。

©Pirelli ©Pirelli
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そのためにはスタート直後から先頭に立って、毎周ごとに後続を引き離していかなければならない戦略で5番手スタートというのは大き過ぎるハンデだったが、名手アロンソは少ないチャンスを見逃さず、地道にリードを築いていった。

【トップに立った瞬間にみせた“抜群の集中力”】
スタート直後に4位に上がったアロンソは、4ストップ作戦のため9周を終えた所でいち早くピットインしハードタイヤに交換する。普通ならピットアウト直後の周回はタイヤが温まっておらず、ペースが伸びないのだが、前を走るロズベルグ、ベッテル、ライコネンらがピットストップを控えていることを知っていたため、この1周を集中してプッシュ。翌10周目で3人が1回目のタイヤ交換を行っている間に差を縮めていきベッテル、ライコネンの逆転に成功した。

残る相手はロズベルグのみ。決勝のレースペースに課題があるメルセデスAMG勢は、第1スティント(ミディアム)では後続を抑えたものの、ハードタイヤに交換したとたんに失速。アロンソはなんなくトップの座を手に入れた。ここまでは予定通りといえば予定通りだが、注目していただきたいのはこの直後数周のラップタイムだ。

ラップタイム比較1

2位ベッテル以下が1分30秒台前半という中で、アロンソは1分29秒台を連発。1周あたり約0.6秒ずつ後続を引き離していき、2回目のピットストップを行う21周目には4秒のリードを築く事に成功。これが4ストップ作戦で勝利をつかむ時の戦略ではあるのだが、限られた数周の間にきっちりと好タイムを並べるのはトップドライバーでも簡単なことではない。少ないチャンスを確実にものにしていくアロンソの勝負強さが光った瞬間だった。

【遥か後方を走るライコネンからの“プレッシャー”】
レースの3分の1にあたる22周終了時点。ちょうど2回目のタイヤ交換を終えアロンソは3位に一旦下がるも、ベッテルとライコネンも2回目のピットストップを終えて27周目に1位に返り咲く。ここでもアロンソは1分28秒台のタイムを連発し後続を引き離しにかかった。この時点で15.3秒と大差をつけられてしまったベッテルはタイヤの消耗を考慮し急きょ4ストップに変更。しかし、その後方で今季絶好調のキミ・ライコネンがトップ奪還のチャンスを伺い、3ストップ作戦を順調に進めていた。

2回目のタイヤ交換で一旦は4位に下がったライコネンだが、1分28秒台で逃げようとするアロンソを約17秒後方で同じ1分28秒台のペースを維持。見た目上は17秒離れた別々の場所を走っている両者だが、その間隔をキープすることで最終的に逆転を狙う戦略。一方、見た目上では後続に対し大きなリードを築いているアロンソは、かつために必要な“20秒以上のリード”に届いていないため、さらなるペースアップが必要。この時点で遥か後方から“ライコネンの大きなプレッシャー”を感じながら走行していたのだ。

ラップタイム比較2

それでも母国勝利のために“やるべきこと”に集中したアロンソ。3回目のピットストップを終えた段階でライコネンは1.7秒前方。この時点で両者ともに1回のタイヤ交換を残すのみとなったため、見た目上ではライコネンが先行していることになる。だが、交換したてで消耗していないタイヤを履くアロンソは、38周目に1分27秒887を叩き出し急接近すると、翌周の1コーナーでパス。各スティントで走る周回数が少ない分、少々の無理な攻めができるため、ここで一気にリードを広げにかかった。一方のライコネンは3ストップ作戦の関係上タイヤに負担がかけられないため1分29秒台が精一杯。最終的に目標を大きく上回る27.2秒のリードを築いてアロンソは4回目のタイヤ交換を敢行。最後は独走状態でチェッカーを受けた。

©Pirelli
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このように、20秒という貯金をレース中に作らなければならない状況で、アロンソは少ないチャンスを確実にものにしていき、集中してベストラップを刻み続けた。母国スペインのファンとしては圧倒的な速さでポール・トゥ・ウィンを飾る英雄の姿を観たいところだっただろうが、5番手スタートとやや不利な条件にも屈することなく、巧みなレース戦略をシミュレーション通りの“圧倒的に強いレース”を披露。スタンドからは惜しみない拍手と声援が贈られた。

『記事:吉田 知弘』

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吉田 知弘(Tomohiro Yoshita)

投稿者プロフィール

フリーのモータースポーツジャーナリスト。主にF1やSUPER GT、スーパーフォーミュラの記事執筆を行います。観戦塾での記事執筆は2010年から。翌年から各サーキットでレース取材を重ねています。今年はSUPER GTとスーパーフォーミュラをメインに国内主要レースをほぼ全戦取材しています。
初めてサーキット観戦される初心者向けの情報コーナー「ビギナー観戦塾」も担当。

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